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地域で泊食分離が行われている城崎温泉
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2023年7月23日、アントニオ・グテーレス国連事務総長は記者会見で「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来したのです」と、危機感を訴えたのでした。異常気象は、新しい常態になり、灼けつくような暑さ、命を脅かす洪水、暴風雨、干ばつ、猛火に世界中が曝されています。
温泉旅館で、宿泊料金と食事料金を別立てにする「泊食分離」という取り組みが進んできています。「泊食分離」は、2017年から観光庁が推進しているもので取り組み始めてから、おおよそ10年が過ぎています。「訪日外国人旅行者(インバウンド)」が増加し長期滞在を希望する人たちが多くなっていったことやシティホテル・ビジネスホテルに押されて旅館の客室稼働率が低くいなど、旅館経営の低迷があり「泊食分離」という取り組みが進められてきたようです。
私たちの旅行では「1泊2食」が定番となっていませんか。「○○の奥座敷」と言われるような「温泉地」に行って、旅館の豪華な夕食をいただき、意匠をこらしたお風呂に入る、というようなものではなかったでしょうか。
統計でも、私たちの旅行は、1泊2日という旅程が多いのです。2024年の旅行統計(日本旅行業協会)の調査では、宿泊数・宿泊旅行回数は、4.77泊、2.26回になっています。それでも、2022年より増加しているようです。仕事に追われてゆっくりと温泉浸かるとか名所・旧跡を巡る旅行をしたいと思っていても、休暇も費用もやりくりが難しいし、みんなが同じ時期にしか旅行に行けないためにどこでも大勢の人出で疲れるだけとなってしまいますよね。
旅館では「1泊2食」のための豪華な夕食が用意されます。会席料理仕立てで、名産の魚料理と肉料理があってどれも趣向を凝らした料理が並びます。どれも美味しいのですがさすがに食べ過ぎでしまいます。連泊の場合には連日、豪勢な料理を頂くというのも食傷気味になってしまいますよね。旅館の豪華な夕食もいいけれど、その土地の名物を食べたいということで温泉街の飲食店を探しながら温泉街を散策するというのもいいものです。また、「ガストロノミー・ツーリズム」にも通ずることですが、その温泉街の歴史や文化に触れ、美味しいものを頂くというのも楽しみなものです。
そこで「泊食分離」という選択肢になるわけです。各地の温泉地では、「外湯めぐり」というような温泉街の公共浴場や日帰り入浴ができるところも多くなっています。温泉地によっては、源泉が違って効能が異なるお湯を楽しめます。古くからの湯治場では、内湯はなくて共同浴場だけということも多いようです。
大分県別府の鉄輪温泉では、「貸間旅館」という宿泊施設もあります。別府名物の「地獄蒸し料理」を自炊し、別府八湯といわれる豊富な温泉を楽しむことができます。「泊食分離」の取り組みが進んでいるのは、熊本県黒川温泉、長野県十倉上山田温泉、石川県和倉温泉などがあるようです。
また、コロナ禍を機としたリモートワークから、展開された「ワーケーション(仕事(Work)と休暇(Vacation)を組み合わせてた造語)」という、職場や自宅とは異なる場所で働き、休暇も楽しもうというライフスタイルにあった「泊食分離」も進んでいるようです。「泊食分離」によって「1泊2食」というスタイルだけではない、選択肢が多様になりこれまでとは違った旅行のスタイルが広がっていくといいですね。
うむっさん