今年の夏は、とにかく暑かった。アメダス観測点の「船橋」では、猛暑日継続日数が、22日(7月22日~7月30日)を記録した。
日本周辺の海洋熱波の影響(NHK首都圏ナビサイトより引用)
暑い夏となったのにはある気象現象が関係しているようだ。それは、「海洋熱波」と呼ばれるもの。気象庁(異常気象分析検討会)の分析によると、「海面水温の極端な高温により、低い位置の雲の形成が妨げられて日射が増したほか、水蒸気が増えるという複数の気象要因が重なって危険な高温をもたらしている」という。
海洋熱波は、「過去の記録と比較して、その時期としては異常に高く、極端な高温が数日から数カ月持続する現象」だ。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6時評価報告書では、地球温暖化に伴う海洋熱波の頻度や強度が増大すると分析されている。
日本列島近海での海洋熱波は、黒潮の流れが北上して冷たい親潮が後退し、三陸沖から北海道沖にかけて発生したことが分かっている。こうした現象により、高温が続くのは日本だけではなく、世界的な傾向になる。世界気象機関(WMO)は「北半球の多くの地域を襲う熱波は夏の日常になり、今夏を含めた今後5年は昨年よりさらに暑くなる可能性」を指摘している。
最近の気象災害をもたらす状況は、海洋熱波のような現象と関係があるようだ。海水温の上昇によって水蒸気が多く発生する。これによって、猛烈で超大型の台風や長く続く線状降水帯が発生している。気象の異常は、気象災害とも言える状況を引き起こし、多くの被害を発生させ、悲しい犠牲を生んでいる。
海洋熱波の影響は、台風の巨大化や線状降水帯の多発だけでなく、海の状況を大きく変えていく。各地でこれまで獲れていた魚種に変わり、違う魚種の漁獲量が増えるなどの状況が続く。これは「魚種のレジーム・シフト(魚種交代)」と呼ばれるもの。
また、海洋熱波に起因して「海の熱帯化」が進み、熱帯性の魚が定住魚となりこれまでの定住魚を圧倒し繁殖し、海藻類を食べ尽くして藻場を消滅させる「磯焼け」と呼ばれる状況を引き越している。藻場は、魚の産卵場であり成育場所でもある。そうした場が失われてしまうことで豊かな漁業資源が損なわれる。
海洋熱波のような異常な気象状況が常態化していく世界で、私たちはどうしたらいいのだろうか。気象庁などの研究グループでは、「地球温暖化の進行に伴って異常高温のリスクが高まっている。近海の海洋熱波が地上の異常高温に与える影響について理解を深め、その予測精度を高めることは気候変動対策の観点から重要だ」と指摘している。
リスク予測に基づく対応が必要となっていく。海洋熱波による地上の異常高温への対応では冷房機器の適切な使用が必要だ。高齢者は体温調整機能の低下などによって熱中症を発症しやすい。また、居室で亡くなる方が多く、エアコンが設置されていても「使用されていない」ケースも多いようだ。物価高のおり電気代を節約したくなる気持ちは分かるが、命を守るためにもエアコンを適切に使っていきたい。
うむっさん