インバウンド(訪日外国人旅行)が増加することによって生じる様々な問題・課題が各地で起こっている。春は桜の花見の季節。季節の行事として私たちも心待ちしている。そんな時期でもあったようで、今年6月の訪日外客数は3,135,600人。前年同月比で51.2%の増加となっている。
日本観光の目的の一つ、「京都」では、「清水寺」、「金閣寺」、「嵐山」や「銀閣寺」などが特に人気になっている。参道は大混雑となっているし、交通手段となるバスは、いつも満員状態で地域の人が利用することができない。京都市が実施した調査では、71.7%が観光の意義を感じているとしているが、人気観光地の混雑については、85.9%、の人が迷惑だと感じている。インバウンドの増加により、直接的な経済的効果があることについての評価は42.6%に止まっている。
インバウンド増加によって生じる課題は、「観光客が増えたことによる問題」と「観光客のマナー違反による問題」といったものになるだろう。「量と質」という見方もできる。「量」に関しては、地元の人たちのバス利用への問題がある。人気観光地への観光特急バス(特別料金が設定)の運行や電車によるアクセスを奨励するPRを進めている。がその効果は不明だという。
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海外からの訪日客
一方「質」では、「旅の恥は掻き捨て」といわれるように、旅行で高揚した気分のまま、マナー違反をしているということもあるようだが、悪質なマナー違反も多々ある。 祇園・花見小路では、お座敷に向かう舞妓さんを追いかけて写真を撮る“にわかパパラッチ”と化すこともある。また、「食べ歩き」も楽しいのだが、食べた後のゴミが道路脇や植え込みなどに捨てられる。ゴミ箱が満杯で周囲に散乱している。など衛生上の問題も発生している。
観光客による問題は、世界各地の観光地で発生している。イタリア・ローマやポンペイ、ベネチアでは観光客がしてはならない行為が定められ、違反には罰金が課される。オーバーツーリズム対策として、観光地への立ち入りそのものに制限を課すことや入場料の徴収、入場のための予約を求めるなどの対策も取られている。
岐阜県・白川村にある「白川郷」。国の重要伝統的建造物群保存地区、ユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されている。ここは、展示物ではなく生活の場として住民が暮らしている。このため、観光客が住居の中に入ったりする問題があった。白川郷を守っていくには、観光客が自らの行動による影響に責任をもつことが必要になる。そこで、様々な取り組みやSNSなどでの情報発信による行動喚起などが行われている。また、イベント開催では入場者数を制限するといったこともなされている。
観光地は歴史的建造物や街並みをテーマパーク化することで集客を図るが、そこに暮らす人々の営みの歴史があることが訪れる人の心に響いていく。観光地を守っていくには、観光客の責任ある行動と地域の営みへのリスペクトが欠かせない。そのためには相互理解を深めコミュニケーションを向上させる情報発信が不可欠だ。
うむっさん