「はやぶさ2」は、2014年12月3日に種子島宇宙センターから「小惑星リュウグウ」へと向かった。地球の引力を利用したスイングバイを行いながら加速して、2018年6月27日リュウグウの上空2万メートルに達した。2019年2月22日に1回目のタッチダウンに成功。そして、4月5日に上空500メートルから「インパクタ(円柱型衝突装置)」によって「おむすびころりんクレーター」と名付けられた人工クレーターの作成に成功。7月11日に2回目のタッチダウン。クレーターからのサンプル採取に成功し、11月13日リュウグウを離れ地球帰還へ。2020年12月6日サンプルの入ったカプセルが回収された。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、科学的成果の最大化のため、世界中からサンプルを使った研究を公募した。各大学などの研究チームでリュウグウ・サンプルの解析の成果が次々と報告されている。
岡山大チームの2022年6月10日の発表では、サンプルから23種類のアミノ酸が検出され、生命活動に関係が深い、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン(コラーゲンに含まれる)、代謝に関係しているバリンなどが含まれていることがわかった。
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はやぶさ2
また、別のチームの分析では、水と反応してできた鉱物が豊富に確認された。これは、リュウグウの母天体に大量の液体の水があり、その後、衝突などで細かく分裂して徐々に水が失われてきたからだと考えられている。水は、岩石に含まれて存在していて「含水鉱物」といわれるもの。
九州大などのチームの2023年2月24日発表によれば、サンプルには2万種類の有機物が含まれている。また、酸にも解けない黒色の有機物が大量に存在しているという。有機物のうち、生命のたんぱく質の材料となるアミノ酸5種類が含まれるという。アミノ酸は、構成元素が同じでも「右手型」「左手型」という構造の違いがあり、地球上の生物のほとんどが「左手型」をつかっていて、リュウグウ・サンプルでは両方の型の量が均等だったことから宇宙で作られたことが確実だという。
2022年8月の発表では、リュウグウの起源は海王星の外側の太陽系外縁だと推定された。リュウグウのもとになった母天体は、はじめ太陽系外縁にあったが、その後、移動や分裂によって現在のリュウグウとなったとみられている。
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リュウグウから採取した試料
リュウグウ・サンプルの分析が進んできたことによって、地球生命誕生の謎が解明に大きく近づいてきた。地球生命の誕生にはついては、これまで数多くの仮説が立てられているがエビデンスが少なかった。しかし、リュウグウ・サンプルは確かなエビデンスとしてこれからも研究が進められていく。こうした成果によって地球生命誕生の謎が完全に解明されわけではないが、これからも小惑星探査計画が実施されることで「謎」の解明がさらに進んでいくだろう。
うむっさん