地政学的な国際情勢のリスク分析を行う米コンサルタント会社「ユーラシア・グループ」が2023年の世界10大リスクをまとめた報告書が今年1月に発表された。報告書では、リスク No.1 ならず者国家ロシア。リスク No.2 「絶対的権力者」習近平。が挙げられている。さらに、「リスクもどき」として台湾危機が報告された。
今年のリスクの大きな問題は、国際的な非難や経済的制裁を受けながらも、自己目的を達成させようとする国家指導者の存在。彼らの行動には、監視も専門家の関与もチェック・アンド・バランスも存在しない。と述べている。
ウクライナ侵攻では、今年1月15日、ウクライナのゼレンスキー大統領がロシア国民に向けて次のようなメッセージを出した。「あなたたちの臆病な沈黙。何かが起きるのを待つだけでは“テロリストたち”はいつかあなたたちに牙を向けるでしょう」。
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ウクライナへの侵略による高層住宅破壊
日本にとっての大きなリスクは「中国」だ。報告書にも述べられている「リスクもどき」とされた「台湾危機」。ウクライナ侵攻以来、台湾をめぐる情勢は緊迫感を増しているが、報告書では、「中国が軍事衝突を引き起こす可能性のある行動をとるのは、パワーバランスが決定的に自国に有利になるか、米国で明らかに台湾を守る気がない大統領が就任するときになるだろう」とし、「2023年には台湾危機は訪れない」としている。
中国の台湾進攻についてのリスク・シュミレーションを今年1月に米国の戦略国際問題研究所(CSIS)が公表。「自衛隊は在日米軍や自衛隊の基地が攻撃された場合に参戦したが、中国側の攻撃で平均122機の航空機、26隻の艦船を損失」、「米軍も空母2隻が撃沈され、168~372機の航空機、7~20隻の艦船を失い、死傷者や行方不明者が1万人を超える」、「台湾軍も壊滅に近い打撃を受ける」一方、「中国軍も海軍は壊滅し、1万人が戦死し、数万人の戦争捕虜が発生。155機の戦闘機と138隻の主要な軍艦を失い侵攻は失敗に終わり武力統一はできない」としている。
マスコミなどでは、「反撃能力(=敵基地攻撃能力)」などについてのみに注力していくかのような論調がある。しかし、「国家安全保障戦略(令和4年12月)」では、「1 国際協調を旨とする積極的平和主義を維持する。2 自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値を維持・擁護する形で、安全保障政策を遂行する。3 平和国家として、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならず、非核三原則を堅持する。」が、安全保障に関する基本的な原則となっている。
武力衝突を回避するためには、国際環境をつくる方策がより重要。クアッド(QUAD)「日本、アメリカ、オーストラリア、インド。安全保障や経済の協議」、オーカス(AUUKAUS)「オートストリア、イギリス、アメリカ。軍事同盟」といった「自由」「民主主義」「法の支配」など共通の価値観を持つ同盟の深化や拡大がより有効な安全保障となる。多くの同盟を築いていくための努力が求められる。
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QUAD首脳による安全保障協議
反撃能力とはいえ武力行使。防衛装備拡充を進めることも抑止力としては大切なことではあるが。果てしない軍拡の道を進む先には何が待っているというのか。武力衝突によって悲惨な犠牲を生まないために、『平和は誰がどう守っていくのか』という命題が私たちに突きつけられている。
うむっさん