「緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦」(テレビ東京)。番組は、水生生物を中心とした“外来種問題”への関心を高めている。外来種でも特に生態系等に係る被害を防止し、生物の多様性の確保や人の生命、身体の保護をしなければならない『特定外来生物』が「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」で指定されている。 特定外来生物等(令和3年8月31日現在)には、哺乳類、鳥類、昆虫類などが111種類、魚類が26種類、植物が19種類指定されている。特定外来生物は、有毒・咬傷により人に危害を加える。農産物を荒らす。ウイルスの中間媒体となる。繁殖力が強く在来の生態系を壊す。などの危険を及ぼす生き物となっている。
鎌ケ谷市内では、動物や魚類・昆虫類の『特定外来生物』は、あまりみることは無いが、植物の類はよく見る種類もある。 『ナガミヒナゲシ』は、4月から6月頃に直径3センチメートル程の薄いオレンジ色の花を咲かせる。ケシであるものの、麻薬成分である「アヘン」は含まない。「アレロパシー活性」が強く、『ナガミヒナゲシ』一色になってしまった空き地や花壇はよく見かける。また、5月~7月頃に道路の中央分離帯や道端でよく見るのが『オオキンケイギク』。黄色い花を咲かせ群落をつくるので景観としてはきれいに見えるのだが。優占する大群落では他の草木が少なくなってしまっている。
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ナガミヒナゲシ
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桔梗
こうした外来種が繁殖することで、生育環境の変化によって在来種の絶滅危惧種も増えている。平成3年2月に市の花として指定された『ききょう』もそうだ。園芸用に改良され花壇などでは見かけるものの野生種を見ることはできなくなっている。
古くは、「朝顔」とされ、『萩の花、尾花、葛花、撫子の花 女郎花、また藤袴、朝顔の花』(山上臣憶良 万葉集)。秋の七草として知られている。『きりきりしゃんとしてさく桔梗かな』(小林一茶)や『朝顔は朝露負ひ 咲くといへど 夕影にこそさきまされり』(万葉集 巻10-2104 作者未詳)という歌も「ききょう」の凛とした美しさを詠っている。
外来種の繁茂や環境変化によって、地域の古来からの植生が失われ、私たちの大切な「自然遺産」が消滅し「私たちの物語」がその意味を失ってしまう。 いま私たちは、都市的利便性を享受しているが、得たものと失ったものをハカリにかけた暮らしをしているともいえる。 そうした暮らしの選択肢では「次世代へ引き継ぐ自然遺産や物語」という視点を軽視してこなかっただろうか。 失われたものはもう取り戻せない。将来、「しゃんとさく桔梗」を見ることができなくなってしまったら、「私たちの物語」は成り立っていくだろうか。
うむっさん