今年の「中秋の名月」は9月10日、夜空を煌々と照らす満月が見られる。9月の満月は「ハーベストムーンHarvest Moon(収穫月)」とも。農産物の収穫が盛んになる頃というような意味もあるようだ。また、「中秋の名月」の前後では、立待月、居待月、臥待月なども俳諧などでは詠われている。
そんな月では、2020年代後半にむかって、新たな段階の探査活動が行われようとしている。宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、月の有人探査計画を進めており、2040年頃には火星での有人探査を行う。2020年10月、米国の「アルテミス計画」に合意したことで、日本の宇宙飛行が月面での探査活動が計画されている。現在、月面での探査活動を支える基盤づくりのための様々な技術の研究が進んでいる。
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NASAアルテミス計画ロケット
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アストロボテックの月着陸機「グリフィン」の想像図
月面活動に必要なエネルギーは電力になる。太陽光発電では、月の自転によって約2週間ごとに昼夜があるため電力不足に陥る。このために、米航空宇宙局(NASA)では、小型原子力発電によって電力を賄うことを目指して、20年代後半には実証炉の建設に進む計画になっている。
また、月には多くの「水」が存在する可能性が高いことがわかってきている。月の極域には大量の水氷が存在していることはNASAの調査で把握済み。「水」は、生命維持のためだけでなく、「水」を電気分解して得られる水素は、燃料電池やロケット燃料としても活用が可能だ。
月面探査のための移動手段としてトヨタ自動車とJAXAが共同開発する、宇宙服なしで運行できる月面探査用有人与圧ローバー「ルナ・クルーザー」の開発が進んでいる。「ルナ・クルーザー」は2台がペアになって活動する。通常は1台に2人のクルーが乗り込み、1台に緊急事態があった時には4人が搭乗する。動力源は燃料電池でマイクロバス2台分くらいの大きさで、地球日で42日間滞在できる。
「ルナ・クルーザー」は、1959年に公開された東宝特撮映画『宇宙大戦争』に登場する「月面探検車」によく似ている。映画では、地球征服を企む“ナタール人”の月面基地を「月面探検車」が攻撃する。当時は、「月面の一部に希薄な大気が存在する」という学説があり、ホバークラフトのように飛行していた。
月での「住居」は、直径200メートル、高さ200~400メートルのグラスのような形状で、回転させて遠心力を生み地球と同じような重力下の環境で、約1000人の人が暮らすことができる「住居」が構想されている。また、「月面版」の全地球測位システム(GPS)や月と地球を結ぶ高速通信技術の開発も進められている。
探査が進むことで、月に存在する有用な資源の活用や地球の成り立ち、宇宙誕生の謎が解き明かされていく。長期間の月面探査が行われることで、宇宙での有人探査活動への知見が積み重ねられ、さらなる新技術が生れてくる。計画が実施されれば、宇宙で人が暮らす大きな一歩を踏み出すことになるのだろう。
うむっさん