昨年12月、日本人の民間旅行者として2人の実業家が12日間の宇宙旅行を楽しんだ。ロシアの宇宙船に乗り国際宇宙ステーションに滞在した。マスコミは「宇宙旅行時代の幕開け」と呼んで新しい時代を予感させた。一方で「金持ちの道楽」と冷ややかな論調もあったようだ。
民間企業による宇宙開発のためには、商品としての宇宙旅行によって収益を上げていく必要がある。最近の旅行代金の相場は、5000万ドルから6000万ドルと値上がりし日本円に換算すると約58~70億円のようだ。宇宙に行くことは、冒険や探検の時代から旅行の時代に移っていく。南極では学術調査による滞在が常態となり、北極旅行が商品化されていく。訓練を受けない人たちによる宇宙滞在が広がっていき、人類が宇宙で定住する時代がそう遠くない将来に到来するだろう。
最近、宇宙開発では熾烈な国際競争が始まっている。月の南極域にある水資源は、ロケット燃料の材料として利用が期待されることから各国が競って活動を進めている。アメリカの有人月探査の実現を目指す「アルテミス計画」には日本も参加している。この計画の目標は「月に人類の活動の拠点を築く」こと。月面だけでなく月周回軌道上に、有人拠点「ゲートウェイ(Gateway)」を建設する。さらに、計画の最終的な目標である火星ミッションのための技術実証が進められる。また、中国・ロシアでは「国際月面研究基地」の建設が計画されている。
sorabatake.jpサイトより写真は引用しました。写真はNASA提供の写真を含みます。
オリオン宇宙船
月軌道ゲートウエイ
宇宙で暮らすということは、人工的な閉鎖環境で人類がどう活動していくかという課題でもある。ある研究によれば、約8カ月の長期隔離実験では、管制室と実験クルーとの間のコミュニケーションが悪化していくという結果が示された。一方、実験クルー内では、問題解決のために人種や性別を越えて結束するという傾向があった。
人気アニメ「機動戦士ガンダム」では、増えすぎた地球人口を「スペースコロニー」に移民させるようになって半世紀。地球から最も遠いコロニー群は「ジオン公国」を名乗り、地球連邦からの独立を宣言し宣戦を布告する。植民地が独立を求めて戦争になるということは、過去にもそして現在でも世界の各地で続いている。独立戦争では、イギリスからの独立を求めた新天地の人たちはアメリカ合衆国を建国した。
将来、地球と宇宙で暮らす人たちの間で同じようなことが起こらないという保証はない。前述の実験によって得られた知見は、人は生存のために共存・共生し結束をしていくということだろう。そうした営為が実験施設でできるなら、戦争という手段を使わない解決策で人類が安穏な営みができるはずだ。 共生・共存の行動が人類の生存本能であるなら。いま世界で起きている不幸な戦争や人種差別・ヘイトを越えて平和裏に解決することができるはずだ。理不尽な侵略によって、命を奪われふるさとを奪われることのない。そして、生涯にわたって心に深い傷を負う人が生まれない世界を築くための叡智を発揮して欲しいと切に願う。
うむっさん