2021年7月26日、青森市の「三内丸山遺跡」など17カ所で構成される「北海道・北東北縄文遺跡群(北海道、青森、岩手、秋田)」がユネスコの『世界遺産』として登録された。縄文時代は約1万年間続いた。約1万2~3千年前から始まり、約2千3百年前に終わり「弥生時代」へと移っていく。約1万年ものあいだ平穏な時を過ごしてきた縄文時代は世界史の中でも特筆される時代だろう。
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復元した大型掘立柱建物
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復元した竪穴建物
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発掘された土偶
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発掘された埋設土器
縄文時代の集落では、長期定住型遺跡として真脇遺跡(石川県)が約4千年間、垣ノ島遺跡(北海道)で約3千年、持続的な暮らしが営まれてきた。歴史的な時間の流れを実感として感じるとることは難しいが、平安時代で約4百年、江戸時代で265年、明治以降現在までで153年である。4千年もの間、縄文の人たちのくらしが持続していた。いま、私たちは、持続可能な社会を目指しているが、縄文の人たちの暮らしぶりになにかしらの示唆があるようにも思われる。
縄文時代を象徴するものといえば『土偶』がある。縄文人は文字を遺していないので土偶の用途は明らかではない。女性を表現しているものが多く、人の出産や誕生と関連づけられた、自然の豊穣や再生を祈るための祭祀具であると理解されている。縄文の生業は四季を通じた狩猟採取。さらにアズキやダイズやクリの栽培もおこなわれたようだ。トチノミやクリといった堅果類、貝類のほかイノシシやシカ、サケなど多様な食物を採っていた。
「土偶を読む」(竹倉史人:晶文社)では、「第一義的には、植物資源の利用(採取・半栽培・栽培)に伴う呪術的儀礼において使用されることを目的に制作されたと考えてよいだろう」。そのフォルムは食糧となった植物を擬人化したものと述べている。宇宙服を着た宇宙飛行士のような「遮光器土偶」は、サトイモを擬人化したものだという。植物の精霊を擬人化した土偶は、食糧が得られたことへの「豊穣」や「安寧」といった願いを土偶に込めた祭具として常に身近に置かれていたのだろう。
現在も各地で産物をモチーフにした「ゆるキャラ」が数多い。「ゆるキャラ」もそのフォルムの愛らしさゆえ大切にされ、ご当地産品の振興を願った気持ちがそれぞれに込められている。例えば、鎌ケ谷市の「かまたん」。ショイカゴを背負って鎌ケ谷のために生まれてきた梨と野菜の妖精として、私たちの気持ちを優しいものにしてくれている。
私たちが、土偶に惹かれるのは、その姿が「かわいい」ものであることも一因なのだろう。ご当地の産物を擬人化している「ゆるキャラ」が多いことからも、精霊を擬人化するという縄文人の精神性は私たちにも受け継がれているようだ。
うむっさん