そうした中でも季節は移ろっていく。暦の上では、8月に入るとすぐに「立秋」を迎え季節は「秋」となっていく。そんな短い夏と言えば、青い空と緑の山や青い海にモクモクとした入道雲。というのが、誰しもがイメージする夏の風景だろう。
晴れわたった青空は「碧天(へきてん)」といわれる。青色には、イライラした気持ちを落ち着かせる効果があり、青空を見上げたときに爽やかで新鮮な気持ちになる。森や林を見とき、心やからだの疲れを癒し穏やかな気持ちにさせるのは緑色が持つ効果。
夏の空のモクモクと白くて大きな入道雲は積雲が発達した雄大積雲。この積雲し積乱雲となると激しい雨を降らせる。毎年のように「記録的短時間大雨情報」が発令される。積乱雲が次々に同じ場所に生まれる線状降水帯が生じ、猛烈な雨を降らせ続け水害や土砂崩れを発生させ甚大な被害となる。
また、入道雲は75年前の決して忘れてはいけない出来事にかさなる。広島と長崎を一瞬のうちに灰燼と化した原子爆弾。『八月は青の深部にきのこ雲(岸本マチ子)』ぬけるような青空のなかにある悲しい記憶だ。
今は、不要不急の外出を自粛している方も多い。そんな自粛生活では、何をするでもなく、ぼんやりしていると様々な想いが駆け巡ってくる。病に倒れて逝った人、中傷に心を砕かれ自ら逝ってしまった人、故なき蛮行に逝ってしまった人たちを想う。そうした想いを、在原業平は伊勢物語で『暮れがたき 夏の日ぐらし ながむれば そのこととなく ものぞ悲しき』と詠んでいる。
うむっさん