新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言は、5月25日に全国で解除された。しかし、宣言解除で、新型コロナウイルスが消滅するわけではない。歴史上の感染症流行を振り返れば、いずれも数回の流行拡大を繰り返している。
新型コロナウイルス感染症でも、次の流行拡大を招かないための「備え」が必要になる。専門家会議の提言では、『行動変容を講じていくことにより、 感染を制御することが可能な状況にしていくこと』。その具体策として『基本的感染対策としての①身体的距離の確保、 ②マスクの着用、③手洗いをはじめとする「新しい生活様式」』を実践していくことを求めている。
私たちの暮らしに新型コロナウイルスが存在することを踏まえた「行動変容」が求められている。公衆衛生上の課題として、治療方法・治療薬やワクチンなどにより病気を恐れることが無くなっても、日常生活のなかで「新しい生活様式」が「習慣」として根付いていくようにするということ。病気のリスクと共生するという考え方だ。
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緊急事態宣言解除後の街頭写真
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新型コロナウイルス COVID-19
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行き過ぎた自粛警察行動
この先、新型コロナウイルスと共生する暮らしが私たちの日常になる。そうした中で、懸念される問題が「社会的スティグマ(社会的な烙印)」による事案。偏見や差別といった負のレッテル張りが頻発すれば、相互信頼という社会的紐帯が失われる。さらに、社会的スティグマを避けるために病気を隠してしまう。その結果として、感染拡大のリスクが増大していくことは、公衆衛生上の重大な脅威となる。
確かに、未知の病気に対する「恐怖」は大きい。この「恐怖」を「他者」と関連付けて不安を解消するのは容易だろう。また、感染防止によせて不寛容な社会正義を振りかざすことで自身の安寧を得ることができるのかもしれない。しかし。こうしたひとりよがりな正義感が発露し理性的に考えられなくなり、それを行動に起こせば、威力業務妨害罪・名誉棄損罪・強要罪など「刑事罰」の対象となる。
レッテルを張られた人たちは、社会的な偏見や阻害によって心身の健康だけでなく社会活動も損ない「平穏な日常」を失う。私たち一人ひとりが、公衆衛生の良い実践に対する責任を共有しているという自覚をもって過ごしていきたい。
うむっさん