8月初旬を過ぎる頃には「立秋」となる。とはいえ、この頃の残暑は相当厳しいものになっている。というのが最近の気象状況だ。暦の上では、24節気の立秋。それにつづく72候では、初候を「涼風至る:涼しい風が立ち、秋の気配がはじまる」となる。朝夕の気配は夏の盛りとは違っているように感じる頃。8月中旬になると「寒蝉鳴く:ひぐらしが鳴くころ」となる。
ひぐらし(蜩、秋蜩、日暮)は、「カナカナ」として知られているのではないだろうか。夕ぐれに「カナカナ、カナカナ」と大きく響く鳴き声を聞きながら、家に戻っていた子どもの頃を思い出す。という方も多いのではないだろうか。しかしながら、昨今では鎌ケ谷で「カナカナ」を聞くこともめっきりと少なくなってしまった。林もなくなるなど、自然環境の変化によって住処を減らし、個体数も大きく減ったのだろう。
「風鈴」写真無料サイトより引用
「カナカナ」という鳴き声は、私たちに物淋しい抒情をおぼえさせる。そうした感情を古人も詠っている。近いところでは、「うち向ふ 竹の林の夕じめり ひぐらしのこゑをひとり聴きゐる」と北原白秋は詠った。また、「ひぐらしの鳴く山里の夕ぐれは風よりほかに訪ふ人もなし(詠み人しらず 古今集)」という歌もある。
「カナカナ」という鳴き声に、もののあわれさや切なさ、哀しみを感じる。秋の気配がする夕暮れ時に、かすかに「カナカナ」という鳴き声を聴くとふと心うちにすき間風が吹き抜けていくということがある。都市化による樹林地の減少、さらにはそうしたことを一因とした温暖化による「異常高温」が続く気象状況。ちいさなセミの声にさえ、「今そこにある危機」が感じられる。
うむっさん