上海紀行
Part 11

          ライター:千遥
                  
 蘇州に向う

 24日からの一週間の勉強を終えた12月28日の金曜日、やっと上海を離れて、当初の予定どおり蘇州への観光旅行に出発することになる。朋友の授業が終わるのを待って、乗り慣れたバスで外灘(ワイタン)まで行き、地下鉄にのりかえて上海駅に向かう。

 上海の地下鉄は2路線しかないので、特に面倒なことはない。中心地の人民広場駅で交差するのでここで乗り換えるだけ。地下鉄は新しいせいもあってか、駅も電車もとても綺麗だ。ホームの壁際には日本と同じように商品や会社の広告があるが、それほど多くはないので気持ちは落ち着く。ホームに売店はない。



上海駅前を行き交う人々

  乗ってくる人を観察していると何となく上品な気がした。外の雑踏に比べると実に静かなのだ。シルバーシートもある。運賃は近いところで2元(30円)、遠くても4元。自動販売機で料金を確認し、硬貨を入れるとテレホンカードと同じようなカードが出てくる。これを改札口で挿入すると、閉まっている回転軸が動き中に入ることができる。この切符カードは下車する駅で回収される仕組みになっている。日本の紙切符より遥かに立派な品物。おそらく何度も使用できるよう考えられたものと思う。




繁華街の幹線道路

 週末は移動する人も多いので並んで切符を購入しなければならないし、それでも、場合によっては乗れないこともあるとのことだった。それで、切符はあらかじめ朋友の石川氏に購入してもらってあった。旅行会社に頼んで持参してもらった。

 そのかわり15元(230円)の手数料がかかったが、これはやむを得ない。あとでよく見ると、上海と蘇州往復の運賃は50元である。随分と高い手数料を支払っていることになるものだ。これは、中国での利権構造を示していると思われる。金を余分に払うとか、コネがあると無理なことも通じるということを聞いたことがある。


 面白いことに、列車の切符は下車駅で回収されないで手元に戻ってくる。新幹線の切符を小さくしたようなもの。今よく観察すると上海駅の発行であることや、上海から蘇州へ向けての矢印が示されてある。

 列車ナンバーや乗車月日、発車時間、指定車両、座席ナンバー、料金などがしっかり書いてある。

「限乗当日当次車、在
2日内到有効」。



上海駅の待合室

 当日の当列車乗車に限る。2日以内有効ということで、日本と変わらない。日本語と違うので文字は違うが、まず誰でも判読できるだろう。大きく異なるのは、切符の表面にバーコードが印刷されていることだ。

 駅の周辺で夕飯を摂ろうと思ったが駅前には小さな食堂しかない。みな似たようなもので、間口も狭くいかにも汚い?店ばかりだ。店頭では客引きが一生懸命に呼びかけている。どの店でも入り口に出来上がった惣菜が並べてある。それほど時間は無い。

 店を選択しているのも面倒になって適当な店に入った。こちらで「これと、あれとあれ」等と指定すると、店員がお盆にのせ最後に白飯をのせて持ってきた。白米は久しぶりだが、カサカサしていてどうも旨くない。中国では、米のご飯はやはり炒飯(チャーハン)が問題ないよいようだ。これなら、どこの店でも美味しく食べられる。適当に腹ごしらえは出来たが、ここの中国菜は全体的にあまり旨くなかった。店を選んでいる時間はないから仕方がない。




爽やかな地下鉄ホーム

 我々の乗る列車は新空調軟座特快の1等席。「軟座」といわれるものは、座席にはクッションもあって綺麗なつくりになっており、ゆとりがある。「硬座」というものがある。これは2等席で名前のとおりで座席が硬い。どちらも、座席は指定というようなものがある。この軟座も、座席ナンバーによって待合室への入り口が異なる。それは目で確認すれば誰でもわかる。しかし厳しいことに、その入り口では切符を確認すると共に、手荷物の検査も行なわれる。空港のチェックと同じ。ここを通過してから待合室に向かうことになる。

 この蘇州への列車で、今回の最大のハプニングが起きた。蘇州までは、特別快速だから僅か45分で着くはずだった。それが何と6時間も掛かってしまったのだ。でも、この事件?を通して私たちは普通の、そして親切な中国人の善意に触れ、無事に蘇州につくことができたのである。(続く)


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