上海紀行
Part 10

ライター:千遥
上海の交通事情(その2)

 始めての土地でも3日もいると概ね街の様子も分ってくるものだ。上海の交通の足は何か。まず多いのは何といっても自転車だ。それにオートバイや自動3輪、リャカー、人力車、タクシー、公共のバス(トロリーバスもある)、地下鉄ということになる。もちろん近郊や市外に出掛けるときは汽車または電車(気動車)ということになる。

 最大の、そして一番安い交通手段である自転車は大学の先生でも、「自転車が一番いい」と言っておられる。見ていると、かなり遠方の人でも自転車をこいで一生懸命やってくる。駐輪場みたいなところはスーパー位だから、あちこちに放置してある。それは大体がかなり古い品物だ。



便利なオート三輪車

 真新しい自転車はあまり見かけない。不思議なことに、日本のような見るからに新しいものは殆どみうけられない。そのへんには修理屋がたくさんあるので、絶えず修理しながら使用しているのかもしれない。情けないことに、日本では面白半分で自転車を乗り逃げする。盗難はごく当たり前だから、常に新車を購入する羽目になっていると思う。

 我々がよくお世話になったバスはどうか。これも新車とみえるものは少ない。言い方は悪いがみるからに中古車と思えるものが多い。それでもとてもよく走る。空調なしの1元のワンマンカーよりは2元の空調つきの方が乗り心地いいし、また新しくて気持ちよい。バスの運転手にも女性が多い。さすがに年配のオバチャンはいない。若くて元気の良い女性が運転している。これが実に運転が上手い。



水産大学付近の通勤風景

 上海に限らず中国は、車は右側通行である。その同じレーンをオートバイも自転車も人も走り、かつ歩く。お互いにそれぞれ意識しながらも、それほど気配りしている風情もみうけられない。先に走るものが勝ち、という状況に見受けられる。バスに乗っていて、ヒヤヒヤするのは日本人だけかもしれない。バスの直前でも平気で横断する。警笛を鳴らしても相手はそれほど気にしているようでもない。不思議な調和があるのだ。

 でも、ぶつかると大喧嘩になるらしい。それで、車はひっきりなしに警笛を鳴らす。警笛の音色が日本のそれとは違う。




女性タクシードライバー

 どうもその警笛の鳴らしようによって、相手もどの程度の危険性があるのか理解しているような気がする。車の車線が日本と反対だから、我々は道路を横断するときに神経を使う。こんなところで轢かれたらえらいことだ。

 それはそうとして、女性の運転の上手さはたいしたものである。日本と違って、中国では専業主婦という女性はいない。
夫婦共働きが当たり前だから、女性の社会進出は著しい。タクシーでも女性が結構多い。一方、電車では車掌はおおむね女性である。制服をきちんと着こなした様相は威厳があり、恰好がよい。

 面白いことがあった。遠距離電車に乗るときには、航空機と同じように荷物のチェックをうけるのだ。そして身体検査もする。まあ我々は、おかしなものは何も持っていないから余計なしなくて済むが。



特急電車の美人車掌

 中国の街中は日本人からみると、信号がずいぶん少なく感じる。車は少ないように見えるが、それでもひっきりなしに走っている。タクシーが圧倒的に多い。それと発展する上海を思わせるように、大型のダンプやクレーン車などが目立つ。ニューヨークでは赤信号でじっと止まっているのは日本人位だったが、それと同じ。北京でもそうだったが、上海でも皆、信号の色などを気にはしていない。渡れるときにドンドンわたる。歩行者が横断していても車が止まるものでもない。まことに微妙なタイミングで横断する。道が広いから途中で立ち往生する光景も見られるが、それも日常のありふれた光景に過ぎない。小さな子どもを連れていても平気で横断するありさまだ。

 何故なのか。日本では青信号ならば車はスピードを出して、そのまま通過する。上海もそれは同じだ。だが、信号が青でも人が出てくることを予測して車は走っているようにみえる。そんなことで、車と人との調和がとれているようだ。(続く)
  


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