細川護熙元総理は、熊本県知事を退任する際に「権力は十年で腐る」という趣旨で『権不十年』と言い、2期8年で知事を辞めた。 出典は中国の古い流行り言葉が基になっているようだ。「花無十日紅 権不十年久(花に十日の紅なし、権は十年久からず)」。本来の意味としては、「いまいくら権勢を誇っていても長くはつづかない、だから辛抱、辛抱」というようなこと。でも、私たちが感じるのは「淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結び、久しくとどまりたるためしなし」という「無常観」ではないか。 各国の政治リーダーの状況では。フランス:任期2期(連続した任期の最長は10年)。アメリカ:任期4年、再選2回まで。イギリス:首相を含む下院議員の任期5年。ドイツ:任期5年、再選制限1回のみ。ロシア:任期6年、連続2期、再選制限は無い(実質上、プーチン氏は、終身大統領となることができる)。中国では、任期2期10年とする憲法条文を削除する改正が行われた。これにより、習近平氏は終身の国家元首となることができる。また、中国の隣国では、三代にわたる世襲政権が続いている。 多くの立憲主権国家の政治リーダーの任期は概ね10年以下となっているが、幾つかの国では、「安定し強力で一貫した指導体制が必要である」こと「長い間解決したくてもできなかった問題を解けた」などとして長期政権が存在する。長期政権体制には、人々の自由な活動や民主的な国民生活が保障されない「独裁」という批判がある。 民主的な方法であるが「衆議を尽くす」では、決定までの時間と手間が掛かる。こうした点を踏まえて「良い独裁」という考えもある。近年の事例では、シンガポールの初代首相であったリー・クワンユー氏は「上に立つ者は大衆の利益を知り、個人の利益よりも社会の利益を優先させる」という儒教思想を根本として、経済発展を推進して現在の繁栄を築き上げた。そして、いまでは国民の幸福度は日本よりも上位となっている。 日本の地方自治制度では、首長の権限は極めて強大で行政の人事権や予算の決定権などを掌握する。『多選になると首長の専制化、独裁化が起こり、行政組織が硬直化する可能性が高くなり、人事の停滞や側近政治により職員の士気が低下する』、『癒着による腐敗も起きやすくなってしまう』との批判が強い。さらに、多選が繰り返されることで、投票率の低下や無投票の増加を招く一因となり、それによって多選がさらに招かれるという悪循環に陥る可能性が高という指摘がなされる。 連日マスコミで報道される問題もまさにそうだろう。「忖度」に始まって、「書き換え」「公文書廃棄の指示」など、『官僚組織のコンプライアンスってなに?』という状態だ。政治だけでなく、「女子レスリングのパワハラ問題」「日大アメフト問題」などもそうだろう。まさに『権不十年』どころか『権腐十年』となっていないか。 かまらさん
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