ホ、ホタルこい


 皇居・北の丸公園の池で、ヘイケボタルの発光が確認されたという新聞報道があった。以前から、皇居のお濠には、ホタルが生息していたが近年は激減した。環境省では、「お濠のホタル」を復活させるため人工繁殖を試み、生息域で発光が確認された。

 ホタルは、繁殖期に発光するので、生息域で定着することができれば、これからもホタルの発光を楽しむことができるだろう。

bing.com/image より引用

 明治時代には、皇居のお濠での「ホタル狩り」に、多くの人出があったという。こうした試みによって、また、夏の夕べにホタルの光の乱舞を見ることができたのなら、東京オリンピック・パラリンピックの環境にやさしいというスローガンの具現化の一つとすることができるのではとも思える。

 蛍の光は、刹那に儚げで妖しく漆黒の闇に淡く瞬き、私たちに幽玄な時を見せてくれる。平安時代中期の歌人である源重之は「音もせで思いに燃ゆる蛍こそ 鳴く虫よりもあわれなりけれ」と詠っている。心に秘めた恋する思いを淡く瞬く蛍にのせた。

 ホタルは、自然環境の永続性のシンボルといってもよいだろう。その意味で失われてしまおうとする環境を守っていく、あるいは回復させていくことで、現代の私たちに失われたものを思い起こさせ、古人の感性や価値観を映し出していく。私たちには、そうしたものを未来に引き継いでいく役割がある。

 1987年2月に公開された松竹映画「蛍川」。原作は宮本輝。ストーリーはよく覚えていないけれど。そのクライマックスシーンは、スクリーン一杯にホタルが舞い。光の渦となっていた。今でもホタルといえば思い出すシーンだ。




     
うむっさん