春分の日によせて


 三寒四温と言われるこの時季。そんな日々も、「暑さ寒さも彼岸まで」、『春分の日』を境に春の足音が間近く聞こえてくる。

 『春分の日』は、太陽が真東から昇って真西に沈む日。昼と夜の長さが同じになる日、春の彼岸の中日ともなる。あの世(彼岸)とこの世(此岸)の距離が最も近くなる。『春分の日』は国民の祝日。「国民の祝日に関する法律」によって「春分日 自然をたたえ 生物をいつくしむ」とされている。

 『春分の日』はその年の暦によって変わる。今年の『春分の日』は3月20日となる。二十四節気では、新暦で3月20日から4月3日頃となる。七十二候では、初候を「雀初巣(すずめ はじめて すくう)」、次候を「桜初開(さくら はじめて ひらく)」、末候を「雷乃発声(らい すなわちこえをはっす)」となる。その時季の表情が浮かぶ。

 二十四節気などに示されるように、私たちは自然を感じる心を大切にしてきた。戦前の物理学者で随筆家でもあった寺田寅彦は、随筆「日本人の自然感」で『語彙自身の中に日本人の自然観の諸断片が濃密に圧縮された形で包蔵されている』と言っている。

 季節感が希薄になってしまった昨今であるからこそ、こうした自然を感じる心をより大切にしていきたいものだ。


 ところで、お彼岸といえば「ぼたもち」。江戸川柳に「嫁さえざえと牡丹餅を七つ喰い」とある。おっ!時代が変わっても変わらないものもここに!。

投稿: うむっさん