ライター千遥
当鎌ケ谷市が全国紙(朝日新聞など)の一面トップ記事に掲載されたのは、昨年10月7日のことだった。千葉県内に上陸した台風18号は、予報通りの強い風雨で、週明け初日の県内各所で猛威を振るった。
鎌ケ谷市南鎌ケ谷のゴルフ練習場「鎌ケ谷ミナトゴルフセンター」では6日午前9時すぎ、ネットを支える高さ20〜30メートルの鉄柱13本が突風で倒壊した。営業時間だったが客はおらず、従業員5人にけがはなかった。そして、ちょうど一週間後には台風19号が再び当地に接近した。市当局は住民の安全を第一に、前回の避難勧告を超え、南鎌ケ谷4丁目の住民58世帯99人に対して避難指示を出す事態となった。
ゆれない町を自称する鎌ヶ谷市。 市のホームページでも、つぎのように市民に伝えている。確かに当地は強固な岩盤の上に所在し、揺れにくいかも知れない。しかし自然災害はいつでも、どこでも発生する懸念がある。市では小中学校の耐震化を完了し、市庁舎の耐震化を目指している。
一般市民は、自らの力で地震などの災害に備えることが必要とされる。「ゆれにくいまち鎌ケ谷」を過信することなく、想定内のことと考え対処することが要求されるところである。
〜「ゆれにくい地盤」の地震に強い街〜
鎌ケ谷市は、千葉県が作成した「ゆれやすさマップ」等で、市の全域が都心に近い県北西部地域でも比較的ゆれにくいことが分かり、地盤が強いまちとして知られています。
この地盤の強さに加え、従来の計画を前倒しし、小中学校の耐震化率100%と避難所備蓄倉庫の整備率100%を平成25年度に達成し、さらに防災への備えを強化しています。
また、「いざ」というときのため、消防本部庁舎やくぬぎ山消防署の建替えによる防災拠点機能の強化にも取り組んでいます。
鎌ケ谷市は約20kuの市域に3つの消防署があり、消防の平均現場到着時間は7分30秒(平成24年実績)です。
(千葉県作成のゆれやすさマップから)
(平成19年千葉県作成) (平成23年千葉県作成)
薬剤服用歴未記載 診療報酬請求
10月の台風災害から半年もたたない2月11日。朝日新聞一面のトップ記事に、「千葉県・鎌ケ谷市」の文字が目に入った。当市に本社のある「くすりの福太郎」がおこなった薬歴未記載による不正請求で
ある。その不適切な請求額は、概算金額で7,000万円にもおよぶ。
台風被害は言わば自然災害であるが、薬歴未記載は患者の身体に大きな影響を与える懸念がある。場合によっては命にもかかわる。あまりにもお粗末なことがおおやけになった。こんなことで、またまた当市の名前が全国に発信されてしまった。まことに情けない。くすりの福太郎では、下記のホームページで謝罪文を掲載している。
http://www.kusurinofukutaro.co.jp/_images/index/news_001.pdf
〜朝日新聞朝刊 2月11日一面トップ記事より〜
この報道記事だけでは分かりにくいので、ちょっと調べてみた。
調剤薬局という聞きなれない言葉がある。ドラッグストアなどに併設されている薬局は「調剤薬局」と呼ばれ、医師の処方箋に基づいて薬を調合し患者に渡す役目を受け持つ。そこには、当然のことながら薬剤師が常駐している。この調剤薬局では薬剤師が記録することを求められているものがある。一般的に、「薬のカルテ」と呼ばれる薬剤服用歴(薬歴)のことである。この薬歴を適切に管理すれば、薬を出すごとに410円の診療報酬が得られる。「福太郎」では、この薬歴を未記載のままに診療報酬を不適切に請求していたことが明らかになった。
2013年3月現在で、この未記載件数は17万件にのぼる。同月の時点で69店舗のうち、48店舗で未記載が判明している。2015年現在での全店舗数は、千葉県で59店、東京都で55店、埼玉県4店など108店がある。福太郎は市内では最も多い薬局で、あちこちに見かける。最近のチラシによると、福太郎のドラッグストアは、鎌ケ谷市内では新鎌ケ谷駅を中心に東武鎌ケ谷駅や鎌ケ谷大仏駅近辺などに7店ある。このうち2店が内部に調剤薬局を設置している。新設されるドラッグストアに福太郎が多いの分かっていたが、本社が当鎌ケ谷市にあるのは初耳だった。
法令では、つぎのように定められている
「調剤薬局の薬剤師は、医師の処方箋に沿って調剤する際、患者ごとに薬の効き具合や副作用などを薬歴に記録して保管しなければならない。同じ患者が再び来たらすぐに薬歴を確認しながら調剤し、問題があれば処方した医師に連絡する」。
薬歴が未記載だと適切な調剤ができず、患者に健康被害が起きる可能性がある。これでは、患者は安心して薬を受け取ることができない。患者は調剤薬局の適切な管理に対して、その対価を支払っている。この不祥事が明るみに出たことにより、福太郎の社長は辞任することとなった。また親会社のツルハホールディングスは、13年以降についても調査を進め、自己負担金を支払った患者に返金するという。
薬歴は薬のカルテ 保険調剤明細書(自己負担分は3割の場合)
筆者はこれまで薬の決定権は医師が持つものと思っていた。患者の状態を診断し、患者に適切な薬を選択し処方箋に書く。薬剤師は、書かれた内容にしたがって薬を処方する。たが、その薬が適切なものであるかどうか。その最終的な判断は、どうやら薬剤師にあるように思える。医師は患者の現況に見合う最適な薬を選ぶことは出来る。しかし、患者が現在服用している薬や過去の薬歴まで、全体的に捉えるのは無理がありそうに思う。
一週間ほど前に歯の治療を予約した。受付嬢は「診察券や保険証とともに、お薬手帳も持ってきて」と言う。こんなことは初めてだ。手元の古い「手帳」をよくよく眺めると、「おくすり手帳は、あなたに処方されたお薬の名前や飲む量、回数、飲み方、注意することなどを記録するためのもの」とあり、また「この記録があると医師・歯科医師や薬剤師の判断に役立つ」とあった。かかり付けの歯科医院も、このたびの一件でやっと目覚めたか。
平成22年からの「おくすり手帳」を眺めてみた。ずーっと通っている定期検診の二つの医院のほかに、皮膚科での軟膏(福太郎大仏店)や耳鼻科での点眼液(花粉症=同鎌ヶ谷駅前店)などで処方された薬名も貼ってある。また、数年前、夜中に何度も目覚めて苦しんだ前立腺肥大症は、市内の大病院2か所から処方されたものも保存されている。結局2年ほど通ったが効果が見られずに服用を止めてしまった。不思議なことに、その後、夜間に目覚めることがない。人間には全てを薬に頼らなくても、自己回復機能があるということか。
以下は、おくすり手帳からの抜粋。
〜 知っておきたい、お薬のおはなし 〜
≪他で同じような薬が出ていないか≫≪飲み合わせが悪くないか≫≪アレルギー、副作用はないか≫
★医薬品&医薬品
たとえば皮膚科でのかゆみ止め、耳鼻科での鼻水止めをもらっている場合、お薬の名前が違っていても、中の成分が重なっている場合があります。
★医薬品&健康食品
同時に服用することで、副作用が出ることも! 飲み合わせによって、お薬が効きすぎたり、効きにくくなったりすることもあ ります。
★医薬品&食品
お薬と食べ物との飲み合わせで、思わぬ副作用がでることもあります。
医薬品と食品の例では、よく知られたものに納豆と脳梗塞の組み合わせがある。脳梗塞の治療中は、通常は納豆を食べてはいけないとされる。治療のために服用している血液サラサラの薬=抗血栓薬(ワファリン)は、納豆に含まれるビタミンKにより、血液の凝固作用が起こるからだ。そのほか、牛乳
× 骨粗鬆症の治療薬、コーヒー・紅茶 × 胃腸薬・痛風治療薬、酒 × 頭痛薬・睡眠薬、アボカド×抗うつ薬、ビール・コーラなどの炭酸飲料×解熱鎮痛剤のような組み合わせも要注意らしい。
原点に戻ってみる。このたび、薬局の領収証をじっくりと眺めた。細部をはぶき大きく分けると、調剤技術料、薬学管理料、薬剤料の3項目に区分される。この薬学管理料の明細は一つだけである。それは薬剤管理指導料となっている。その金額は410円(41点×10円)。ただし、この410円は、おくすり手帳に領収証を貼った上で、患者に手渡した場合に適用される。手帳に貼らないで手渡した場合は、340円しか請求できない。
そんなことで、薬局では「必ず手帳を持参して下さい」との表示が目立つ。薬剤師側には薬の服用方法や、副作用の有無などについても、より丁寧な指導が求められる。410円を支払うのは、薬の代金ではなく、「管理指導料」なのだから...。
この管理指導料をとっておきながら、「管理」をしていなかった(薬歴未記載)のが福太郎である。この事案は、元福太郎に勤務した薬剤師による朝日新聞への投書により発覚した。
この報道のあと、小売り店最大手・イオン子会社の大手薬局チェーン「CFSコーポレーション」(東証1部上場、本社・横浜市)の調剤薬局で、薬剤服用歴(薬歴)を大量に記載していなかったことが判明した。2013年6月末時点の社内調査で、20店で計7万8140件にのぼる。
「福太郎」つづき、薬歴の未記載問題は広がりを見せ始めている。3月3日には、別のグループでの未記載問題が報道されている。これら一連の不祥事について、現在のところ厚労省の新たな動きは見受けられない。まあ、発覚したものは、おそらく氷山の一角にすぎないのではなかろうか。
福太郎の親会社・ツルハホールディングスの社是は、「しんせつ第一」「信用第一」、そして「すべてはお客様のために」だ。今回のミス? を薬として、より一層、顧客(患者)のために尽くしてほしいものである。(C.W)
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