歴史は繰り返す 悲劇と惨劇

ライター千遥


 
 例年よりも1日遅れて7月22日に梅雨が明けた。と同時に、当地も猛烈な暑さに見舞われている。昨年までの夏場は、早朝か夕食後に1時間ほどウォーキングをしていた。これにはそれ相当の理由がある。過度の飲酒のため、掛かりつけの医師に肝機能の悪化を指摘されたことによる。以来、晩酌も控え、食後もダラダラと飲んでいた焼酎も止めた。こうして、その空いた時間を「歩くこと」に充てることが出来た。
 しかし、何事も継続は難しい。定期健診などで数値が良化すると、元の木阿弥と化し、夜の飲酒習慣が復活してくる。そんなことで、目標とした体重減も叶わぬままに無為な生活を余儀なくされている。「時には、自己反省するだけでも良し」として自らを慰めている。情けない自分がいる。

 一方、世の中の動きに目を転じると、様々なニュースが飛び込んでくる。いつ果てるとも分からない戦闘が、世界各地で行われている。イスラエルとパレスチナ・ハマスとの戦い。ロケット砲による相手陣営への砲撃は、一時的な「停戦」後も、どちらからともなく砲撃が始まる。圧倒的な武力を有するイスラエルは、ガザへの空爆を始めた。逃げ場のないガザ地区の一般民衆は死者1500人に達した。やられれば、やり返す。倍返し、三倍返しなどでお互いの憎しみは増すばかり。同一の国内でも戦闘は続く。イラクやウクライナなどでも、政府軍と反政府武装集団との戦いは終息の予測もつかない。

 マレーシアの旅客機が290人もの乗客・乗員と共に行方不明となる事故が報道された。そ
の数日後、こんどはアルジェリアでは旅客機が墜落した。不思議なことに飛行機事故も連鎖する。台湾機が離島への飛行で、これまた墜落。最悪なのは、東部ウクライナの戦闘地域上空で、ミサイルで撃墜されたマレーシアの民間航空機だ。298人もの人々が粉々に砕かれて、高度9000メートルから落ちてくる。安全とされていた高度らしいが、遥か彼方の飛行機もレーダーで捕捉され撃ち落される。恐ろしいことが現実に発生している。

 国内では、脱法ハープ(通称: 合法ハープ)を使用した者による交通事故が続発する。本年6月に池袋駅付近で歩行者を次々とはねて、7人もの人々を死傷させた事件。以降、全国で脱法ハーブの吸引が原因とみられる交通事故が相次いでいる。警察当局は、「脱法ハーブを購入して車に乗り込み、すぐにたばこ感覚で気軽に吸引して、暴走させてしまっていると考えられる。運転に深刻な影響があるのを軽視している」とみており、多発する事故に危機感を募らせている。危険きわまりないハープは「危険ドラッグ」と定義され、その保持者や使用者が、つぎつぎと摘発される。得体の知れない人から連鎖するがごとく、その対象は地方議会の政治家や警察官まで人を選ばない。

 そして、長崎県・佐世保市では高1女子が同級生に殺害された上、身体を切断されると言う身の毛のよだつような事件が起きた。2004年、同じ佐世保市において、小6女子が同級生をカッターナイフで切り付け殺害した事件があった。ちょうど10年前に、同じような事件が起きたとは! 何たる因果なのだろうか。
 

       
中国・鶏肉使用期限切れ事件

 「食は中国にあり」と言われ、日本人にも親しまれる中華料理。その本場、中国で味わう料理は何とも言えない美味しさがある。しかし、その製造過程は目に見えない。過去の教訓は、中国ではなかなか活かされないようである。
 冷凍ギョーザ事件では、ギリギリまで自国の責任を認めなかった中国が「マクドナルド」などに納めていた鶏肉の期限切れを自ら公表すると言う珍事 ? が起きた。この事実を最初に報道したのは、上海テレビである。使用期限切れの鶏肉を販売していた食品会社は「上海福喜食品」。この問題は、上海のテレビ局が内部告発をきっかけに、約3カ月にわたって取材し発覚。

 期限切れの鶏肉を供給していた上海福喜食品の従業員は、テレビ局の潜入取材で「期限切れを食べても死ぬことはない」と話していた。上海当局の調べに対し責任者が、期限切れの利用は長年続いた会社のやり方で上層部の指示だと語ったことも明らかになった。内部告発した従業員は期限切れ鶏肉の利用について、問題があると上司に訴えたが解雇された。

 日本ではマクドナルドとファミリーマートのみが該当肉を輸入していたことも判明し、両社は直ちに輸入を取りやめた。

 中国では2004年の偽粉ミルク事件で乳児が多数死亡したほか、08年には冷凍ギョーザへの殺虫剤「メタミドホス」混入で、輸出先の日本で健康被害を引き起こす中毒事件が発覚。12年には中国で抗生物質を投与された危険な鶏肉がケンタッキー・フライド・チキン(KFC)に納入された事件も明るみに出ている。

 度重なる食品の問題で再発防止が叫ばれてきたが、今回の使用期限切れ鶏肉の供給問題で、中国における安全に対する認識の乏しさや、消費者の健康を顧みない利益優先の姿勢が改めて浮き彫りになった。今回問題となった「上海福喜食品」が23日までに衛生監督当局に提出した顧客リストには、中国国内のセブン−イレブンやスターバックス、ピザハット、KFCなど約150の社名が記されていた。中国内の販売先は上海や北京など20以上の省や市に及び、健康被害への懸念が広がっている。

   


 この事件を海外諸国のメディアが報道しているが、その取り上げ方は様々である。米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は24日、中国上海市の食品会社「上海福喜食品」が使用期限切れの食肉を使用していた問題を受け「中国の食品制度は何でもありだ」と題する社説を掲載した。
 社説は、多数の乳幼児に被害が出た2008年の汚染粉ミルク事件などを受け、中国当局は法整備を行い、安全規制を改善してきたことを紹介。だが、規制を担う当局者の教育が不十分で執行体制に問題があったことから「上海福喜食品を含む食品製造業者の間に『何でもあり』の文化をもたらした」と分析した。 上海福喜食品の親会社であるアメリカの食肉大手「OSIグループ」は、上海福喜食品が出荷した全製品の回収を決定している。
 23日付の上海紙、東方早報は、冷凍設備のない倉庫で他社から納入された鶏肉を、上海福喜食品が自社製品と見せかけて出荷する工作が行われていたと伝え、組織的関与を強く示唆した。カビが生えた牛肉を再加工した製品も出荷していたとの報道もあり、捜査当局は問題の商品の流通ルート特定を急いでいる。

 上海福喜食品は米イリノイ州の食肉大手OSIの子会社で、系列工場が山東省や雲南省などにある。食品業界関係者は、「ファミリーマートなど日本企業は、米国系の工場なら中国製でも品質に問題ないと考えていたのではないか」と話している。

 

 かなり長くなるが、この問題に関して各国のメディアの報道内容を検証してみたい。 

  
「中国英字紙チャイナ・デーリー」

 「外資の危険な行為は見逃されるべきではない」と批判。“外資たたき”による責任転嫁の一面をのぞかせた。チャイナ・デーリーは23日付きの社説で同社が米企業の子会社であることを強調し、「外資だからといって危険な行為が見逃されるべきではない」と批判。関係者の厳正な処分が必要だと訴えた。
   
  
  「新華社電」

 23日、上海の公安当局は同日までに「上海福喜食品」の関係者5人を刑事拘束した、と発表。組織的な違法生産行為があったと認定したとみられる。上海福喜食品は原材料の鶏肉の使用期限が6日間にもかかわらず半月経過したものを使用していたという。下記は新華社のWeb記事から抜粋。

    

    

  
「厚生労働省」

 23日、今年7月までの1年間に上海福喜食品から約6千トンの食肉加工品が輸入されていたと明らかにした。問題の鶏肉加工品を使用していたマクドナルドなどの店舗は中国国内の他地域にも及んでおり、
浙江省や山東省の食品監督当局も調査に乗り出した。
 中国国内で上海福喜食品の鶏肉を取り扱っていたとされた各社のうちセブン−イレブン、スターバックス、バーガーキング、ピザハットの日本の運営会社は23日、上海福喜食品の食材を扱っていないことを明らかにした。
 厚生労働省によれば、今月までの1年間に同社から約6千トンの食肉加工品が日本に輸入されていたという。だが本当にそれだけか。氷山の一角ではないのか。
 今後も彼らが国際常識を守れないのであれば、日本企業や消費者も自衛のため、中国リスクとの付き合い方を、本気で考え直さなくてはならない。
  
     

       

 24日付の共産党機関紙、人民日報は「福喜」が米食品大手OSIグループの企業であることを強調し、「外資系企業は海外では法律を守っているのに、なぜ中国ではそうしないのか」と批判。国営中央テレビもウェブサイトで「国際的ファストフード企業が相次いで食品安全問題を起こしている。中国人の健康を軽視しているのか」と責めた。

  
「大紀元日本」

 7月28日、上海福喜食品が、使用期限切れで変質した大量の肉を使った食肉製品を中国や日本の複数の大手ファーストフードチェーンに納入していた問題は、香港でも波紋が広がっていると報道。当初同社の食材を使用していないと発表していた香港マクドナルドが、一転して使用を認めた。
 一方、香港当局「食物および環境衛生署」は24日、同社は直近の1年間で380トン以上の「福喜食肉」を輸入し、すべて販売していた。と発表した。
 
 
「(週刊文春 2014年8月7日号掲載) 2014年7月30日(水)配信」

     

   

 消費期限が切れた肉や床に落ちた肉を再利用していたことが発覚した中国・上海の食品加工会社「上海福喜食品」の現役従業員が、週刊文春のインタビューに応じた。この従業員は10年以上、上海福喜食品に勤務しているベテラン。工場内の様々な現場を見てきたという彼は、こう明かした。
 「床に落ちた肉を拾うのはそもそも工場のルールなんです。機械を回しながら肉を投入するのでどうしても床に落ちてしまう。だから設置された青いプラスチックの容器に拾って入れなさい、と。容器がいっぱいになったら肉を回収し、『菌敵』という細菌殺菌薬を200倍に薄めた溶液で洗浄する。仕上げに度数70%のアルコールでさらに消毒し、再利用するんです」...。 

 中国鶏肉の危険性について、週刊文春が約1年前に警鐘を鳴らした特集記事「あなたはそれでもチキンナゲットを食べますか? マクドナルドの中国産鶏肉が危ない!奥野修司+本誌取材班」(2013年5月2日・9日ゴールデンウィーク特大号)は、「週刊文春デジタル」にて緊急再録され、7月31日(木)午前5時に公開された。中国で病死肉横流しも横行 使用期限という概念なしの指摘もあり。

   
「NEWSポストセブン」

 2014年7月31日(木)7時0分配信。
 日本人は、喉元過ぎて熱さを忘れていたが、中国“毒食品”は枚挙に暇がない。2008年の毒ギョーザ事件以降も、隣国では度重なる“毒食品”が世間を騒がせている。
 例えば毒殺したネズミや猫の肉を羊の油や香辛料に漬け、羊肉と偽って安く販売する業者が相次いで摘発されている。昨年、北京で路上販売のシシカバブを食べて中毒症状となり、病院に運ばれた男性の血液から殺鼠剤の成分が検出され、北京市民に衝撃を与えた。男性が食べたシシカバブは、ネズミや猫の肉を使っていた可能性が高いという。
 病死肉の横流しも横行している。昨年、上海市を流れる川に1万頭を超える豚の死骸が漂流したことがあった。

 なぜ、中国の食品問題は繰り返されるのか。
中国の食問題に詳しいジャーナリストの椎名玲さんは、中国人の「衛生意識の低さ」を指摘する。

「慢性的な水不足の中国では、昔から手や食材をよく洗う習慣がありません。彼らの考え方は“火を通せば何でも食べられる”というもの。
 生産過程でカビが生えようが、商品が地面に落ちようが全くお構いなしで、『使用期限』という概念がないんです」。
 

 「食」の問題で中国の状況を書こうとすると、限りなく「期限切れ」なく書き続けることが出来る。2001年の上海語学留学以来、ツアーや個人的に訪れた中国の印象は極めて良かった。多少は中国語が話せたことで、普通の中国人との交流はより楽しいものであった。高級料理店から屋台の食事まで、様々な食べ物を経験した。「郷に入らば郷に従え」で、現地・中国人と同じ目線で食事もしてきた。

 あるとき、ツアーで大連に行った。昼食や夕食は立派な料理店で大連名物の「海鮮料理」を味わった。翌日の朝、朝食の前に中山広場に行く途中に市場があるのを見つけた。好奇心旺盛な私はノコノコと中に入った。ここで品物を購入するとは思えない私を見ても、誰も注意などはしない。私はひと目見て、市場内の様相にビックリした。あまりにも汚らしいのである。原材料とは言え、このような品々が加工され、料理人によって、見た目にも食欲をそそるメニューが出来上がる。そのギャップの大きさに驚いた。
 だが、いちいち考えていたら何も食べられない。今回の事件を切っ掛けに日本人は、改めて中国産の食品を見直すかも知れない。しかし食料自給率が50%に満たない我が国は、中国からの輸入に頼らざるを得ないのが現状である。人間は一人では生きられない。と、同じように、日本という国も一国では生きられない。これまで日本人は、中国産の食品をかなり食べてきた筈である。2008年の冷凍餃子事件前は、「中国産」であることも気にしていなかった、と思われる。そして、特に健康に影響を与えることもなかった。
 これからも、中国なしの食卓は考えられない。毒入りや期限切れ、身体に影響を与える科学物質を含むものは勘弁願うと共に、輸入業者には更なる検査体制の確立をお願いしたいものである。



 **追記**
 上記の事件に連鎖するが如く、当市の隣り船橋市の東武百貨店において、消費期限を改ざんされた食品が発覚した。
 新聞のベタ記事(左端)のところに記載されていたため、多くの読者は気付かなかったかも知れない。この手の詐称は中国に限らず、我が国でも行われていると見て間違いはないと思われる。製造する業者が故意に実施するならば、その偽りを見抜くのは極めて難しい。期限切れ鶏肉の発表は日本人や一般中国人に衝撃を与える一方で、「このようなことは、日常茶飯事のこと」との冷めた見方もある。(C.W)