今回の「ロボット工学」講演会は、地元鎌ケ谷市商工会工業部会が主催し、白井市商工会工業部会が後援して開催するもの。 平成25年7月12日(金) 午後6時30分〜8時 会場 鎌ケ谷市総合福祉保健センター保険センター6階会議室 テーマ:『ロボットが開く未来』 講師:千葉工業大学 未来ロボット技術開発センター 所長 古田 貴之氏 古田氏のプロフィール: 工学博士1968年、東京都生まれ、1996年、青山学院大学大学院理工学研究科機械工学専攻博士後期課程中退後、同大学理工学部機械工学科助手。2000年、博士(工学)取得。同年、(独)科学技術振興機構のロボット開発グループリーダーとしてヒューマノイドロボット開発に従事。2003年6月より千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター所長 主催者側より鎌ケ谷市商工会工業部会長の阿部氏に続き、来賓として市長代理の市民活動推進部部長及び白井市商工会工業部会長の挨拶があった。 2011年3月11日の東日本大震災で、福島県の東京電力福島原子力発電所の原子炉建屋が水素爆発で建物が崩壊し、大量の放射能が原発周辺の空中や海水、陸上に大量にまき散らされ、いまだ自宅に戻る事さえかなわず避難所生活を強いられている元原発周辺居住者の方も多い。高濃度の放射能に汚染された原子炉には、人は危険で近づけず、原子炉建屋内作業ロボットが活躍をしている。 当初はアメリカ製の軍事用観測ロボット等使われたが、今では使い勝手から国産の作業用ロボットが使われている。こうした国産の原子炉建屋内作業ロボットを開発、提供したのが千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(略称:fuRo=ヒューロ)であり、この研究所の所長を務める我が国のロボット工学第一人者である古田氏の講演であった。 当NPO法人も昨年から「子どもロボット工作教室」を開催しているため、ロボット工学の専門家のお話を楽しみにして参加した。当日は夕方6時30分から開催され、会場にはロボットに関心が高い親子連れの方や大人を含め約50名弱が講演を聞きに集まった。どんな先生がロボットについてお話をして下さるのかと思っていたら、工学博士のイメージとはかなり異なる、背丈が高く少しやせ気味の若い感じの先生だった。(身長:190cm 体重:45Kg 年齢:45歳) 講演の進め方も話し方もかなりユニークで、最初は面食らったところもあったが、お話を聞く内にロボットに係わる話題に引き込まれ、ロボット技術の進歩の速さと未来におけるロボット応用技術の素晴らしさを感じることが出来た。 古田先生が会場にいる子供たちに身近なところから、例えばアニメで人気のガンダムについても、もし本当にガンダムを作るとなれば一体いくらかかるか知っているかい?との質問に誰も答えられなかったが、古田先生の回答では800億円かかって、時速8Kmぐらいでしか走れないと話された。またその落ちとして、その費用計算をしたのは実は自分であると告げられ、こんなバカな事もしているんですと会場を笑いで包んだ。
(注)使用した写真はすべて千葉工業大学未来ロボット技術研究センターのホームページより引用しました。
当日の講演の為に用意された、スライドは600枚ほど。その中から参加者に興味がありそうな話題を選んでお話をしてくれた。中でもロボット工学に進んだ自分の生い立ちや、原発用作業用ロボット開発だけでなく、他にも色んな形のロボットを並行して研究をしていて、その開発レベルは外国に比べてもかなり進んでいると自負されている。参加者が関心の高い「ロボットが開く未来」について、アメリカではどうしても軍事用が先行し、そのロボット開発には多額の懸賞金を使って、コンテストで優勝した優秀な民間のノウハウを吸収してロボット開発が先行している。その一つの事例として軍事用の4本脚の運搬用ロボットを動画で説明。これに対して千葉工業大学で開発したロボットは、先の原発事故現場での放射能観測ロボットやレスキュー用ロボットの他、研究中のロボットは将来は二本足ロボットの上に人が乗って操縦するタイプのものを開発中と、これもサンプルを動画で見せてくれた。
(注)使用した写真はすべて千葉工業大学未来ロボット技術研究センターのホームページより引用しました。
特に興味が持てたのは、アメリカの自動車産業が世界の市場奪還を狙う、従来の内燃機関によるものからZEV法(ゼブキセイ)電動モーターに切り替え、車の走行を自動走行で安全を確保しながら道路を走らせる様な、国家戦略というものがこのZEV法の中に隠されているとの話には興味をひかれた。 ZEV法関連サイト:http://techon.nikkeibp.co.jp/article/WORD/20080123/146089/ 国土交通省が進める「超小型自動車の安全性に係わる調査」でL6、L7カテゴリーと言われる分野での国際社会に於ける開発競争が今後加速する。こうした超小型車へのロボット工学の応用分野も広く、国や国内の自動車メーカーとの共同研究も行っているのとの事。 最後に、古田先生はこのロボット工学を応用するため、積水ハウスと千葉工業大学が共同研究を進めていると事や、将来は家・町・自動車がシステムでつながり大きく未来が変わると話された。 参加した子どもたちに積極的に話しかけられ、ロボット工学を学ぶ楽しさと、現在子どもたちが何のために勉強しているのか、学問をする根本的な考え方を子どもたちに話してくださったのは、子ども達や保護者にとっても良い刺激になったのではなかろうか。古田先生の次から次へと浮かぶ天才的なロボットに対する開発アイディアは現代版のレオナルド・ダビンチの様にも思えた。 残念ながら、今回の講演会では古田先生が参加者に見せるロボットを持ち込まれなかったので、会場でロボットが実際に動くところを見る事が出来なかったが、次回は必ずロボット持参する事を約束され、アンケートに2回目を開催するよう要望を出して欲しいと結ばれた。 また、当方の準備の悪さから、講演中の古田先生の写真を、デジタルカメラの電池切れで撮影する事が出来なかったので、不足分をネット上で公開されている古田先生の写真や各所で活躍中のロボットなどを引用させていただいた。 レポート:S.K |