新たな出会い・研鑚・社会貢献の場を求めて

**** たまには桃源郷へ ****


  オッチャンは毎週のように近くのスーパー銭湯に行く。自宅マンションの浴室は、数年前にユニット式に改装された新品そのものだが、むかし通いなれた銭湯のほうがかえって落ち着きがある。そう感じるのは世代間のギャップのせいだろうか。凍えそうな寒さの中、タオルと石鹸持参でよく通った銭湯は懐かしいものである。寒い真冬にはタオルは凍って棒のようになっていた。

  浴場の衛生状態は今ほど徹底していなかったから、たえず浴槽からお湯が溢れ流れるということはない。いはば溜め湯である。早めにいかないと浴槽の湯は次第に汚れてくる。それで暇な子どもたちは、開店する午後3時ともなると急いで出かけたものだった。

  日本人は、とにかく風呂の好きな人種である。今、自宅の風呂は新しいから、家族の者は皆、毎日のようにその新鮮な浴室でお湯に浸かっている。とかく女性は長電話に加え長風呂だから、オッチャンは酔っ払ってくると、そんなおなごの習性には到底付き合ってはおれない。出てくるまで待つのは至難な業である。そこですたこらサッサと、風呂にも入らずに布団に潜り込んでしまう。その始末は、翌日お金を支払っての銭湯がよいとなる。

  実際、無駄なことをしているのだが、そのほうが気も休まるし身体にもよさそうに思っている。スーパー銭湯に来場する客層はやはり同年代の男女が多い。しかも清潔さを身上とするかにみえる一般女性でも、銭湯は別とみえ、若い女性でも子どもたちを連れて結構やってくる。幼児や老人は浴槽の中で小用を催すことが多いと聞くが、実態もまず間違いないところだろう。みな知っているはずだが、浴槽の中で顔を洗っている人もいるから面白い。

  かくいうオッチャンだって、同じような経験をしたことがある。あえて弁明すれば、浴槽の中で用を足したということではない。そうなりそこなったということである。それで風呂に入る前には必ずトイレによる。人間には連鎖反応というものがあり、誰かトイレに行こうとすると、「私も」と続くことがよく見られる光景である。いわゆる連れションである。これは男女に無関係のようだ。面白い習性があるものだ。
  そうそう、浴槽の中でのオナラは昔、よくしたことがある。身体から出された空気が泡となってブクブクと上がってくるのを楽しんでいたものだったなぁ。よく本物がでなかったものだ。

 オッチャンも外出から帰ると、まず手を洗う。すると不思議なことに小用を催す。ならば先にトイレに入り、それから手を洗えば二度手間にならないのに、どうしてもそのような習慣が身につかないのだ。いつになっても、頭と行動が一致しない。

  ふたたび銭湯の話に戻る。「銭湯」という名前はいかにも古くさい。今や半分「死語」に近い。それがスーパー銭湯で復活した。銭湯だけなら、若い人には知らない人も多いだろう。では温泉とスーパー銭湯と、どう違うのだろうか。実態は地下から湧き出た温泉水と科学的に作られた水道水との成分が異なるだけで、施設などではヘタな温泉旅館よりは遥かに立派な銭湯も多い。当地・鎌ケ谷の銭湯には近隣からも多くの客が訪れてくる。船橋、白井、湘南など、あちこちから来ている様子がうかがえる。
  みな、手軽な温泉気分を味わっていると考えると、ちょっと侘しい感じがしないわけでもない。

  ここでは思わぬ知り合いに会うことも多い。みな好きなんだなぁ。まさに裸の付き合いである。鎌ケ谷には公営の同様な施設があるが、何しろ遠すぎてちょっと気軽に行っておれない。先年、経費削減を目的に運営を民間に委嘱したが、交通の不便さは変わるものではない。前市長と業者の癒着から始まった施設である。採算を考えぬ役人の発想のツケの負担は、今も市民に大きくのしかかっている。わが近所のスーパー銭湯では、会員には割引入浴券を発行するし、さらに安い回数券もだしている。会員にはビールや食事も安くなる。

  また、ときどきイベントを催し、新しい顧客の獲得に余念がない。毎月26日は「ふろの日」である。この日は通常料金の半値になる。早朝に行くと一人暮らしと思しき老人が生ビールを傾けながら、朝食を摂っていたりする。ちょっとわびしい感じがするが、意外とご本人は楽しんでいるのかも知れない。風呂上りの、それこそ至福のときに見える。昼時以降は夫婦や家族連れが目立つ。のんびり風呂に入って手足ものばす。入浴後には家族揃って、ビールを楽しみ食卓を囲む。

  結構楽しそうに見える。庶民には現代の一つの桃源郷にも思える。ここでオッチャンが気になるのは、女性たちの喫煙者の目立つことである。男性の喫煙者が減る一方で女性の喫煙者が増えている。一般的には嫌煙側に所属すると思われる女性だか、実態はそうでもない。男性は職場でも禁煙や分煙を迫られて、いまや、ゆっくり吸える場所は本当に少なくなってきた。
  女性はといえば、亭主が禁煙を進める一方でまだまだ吸う場所がある。自宅で悠々と吸えるし、自由そのものである。自動販売機で、タバコを山のように買いだめする女性などを見かけるとウンザリする。鎌ケ谷市内を走る車は軽自動車が多いが、自営業と思しき女性運転者のタバコ片手の運転は見るに耐えない。
  銭湯の休憩所での、ほんの僅かな楽しみ紫煙の一服位は、まあ、許して差し上げましょうか。

  下記は長崎市国際課で発行する「地球市民」の先月の特集からの抜粋である。日本人が何故風呂が好きなのか英文などでも紹介されている。



特集:日本の家とお風呂について

 日本の家屋は昔に比べるとずいぶんと変わり、画一的に洋風化されてきました。しかし、「お風呂」となると話は別で、木のお風呂あり、石のお風呂あり、タイルのお風呂あり、ユニットのお風呂ありとそれぞれに個性的です。このようなことは、他の国の建物にはあまり見られないのではないでしょうか。
 そこで、日本人にとっての「お風呂」とはどういうものなのか、少し調べてみました。


            日本人は何故お風呂が好き?
   
   日本人はきれい好きで清潔家が多いから…という人もありますが、
  一つにはこの国が高温多湿の気候で、肌にアカをため込むときもち
  が悪いし、健康にも良くないから、入浴して肌を清潔にしておこうと
  いう習慣がいつのまにかついたからだと言われています。
  それと、清潔な水が豊かにあり、木造建築なので浴室設備も容易に
  取り付けられ、温泉に恵まれているという点からも風呂好きになった
  のではないでしょうか。



              なぜ浴槽と洗い場があるの?
  
  38度前後の湯温を好む欧米人に比べ、日本人は42〜44度ぐらいの
 やや高めの湯を好みます。そのため浴槽に長くつかっていられないので、
 身体を冷ますために洗い場があり、また、身体のアカはそこで洗い流し、
 浴槽にはきれいな身体で入りたいという想いから発生したようです。



               なぜお風呂は良いの?

  入浴して身体が温まると、心拍数や呼吸数が速くなって血液循環が
 良くなります。そうすると当然、血液の中に酸素が多く取り込まれる
 ことになり、新陳代謝が活発になります。
 さらに、水の圧力などにより疲労物質である乳酸を速く減少させること
 になるのです。 このように入浴は肉体的な疲労を 取るだけでなく、
 精神的なリラックス効果も大きいようです。



 ドッと疲れて帰ってきた時、あるいは心も身体も冷え切った時、その身を湯船にゆっくりと沈めながら何か救われた想いをした人は多いではないでしょうか。

 これだからお風呂はやめられません。家のお風呂も良いけれど、たまには近所の銭湯や近場の温泉にでも行ってみましょうか?



オッチャンは、自分専用の石鹸やシャンプーなどを持参して浴場にいく。まず備え付けのボディシャンプーなどは使わない。どうも体質に合わない気がするからだ。湯温は42度位と40度程度、それに18度位の三つに分けられている。大体は40度の湯温を選ぶ。のぼせやすいから、熱いのはとてもゆったりとは入っておれない。それで少しぬる目のお湯に浸かる。18度となると、プール並みだからこれは年寄りには危ない。心臓を一撃されたら困る。丸裸でプカプカ浮いているのもみっともないからなぁ。

  いつも持参するタオルは、普通のありふれたものとアカ落し専用のものである。1時間程度の入浴時間のうち、半分以上はアカ落し専用タオルで全身のアカを落とす。まさに戦時中の乾布摩擦そのものである。この乾布摩擦は皮膚を刺激し、風邪の予防に大いに役立ったように思う。オッチャンは、この戦法で銭湯に通っている。皮膚についたアカをくまなく落とした後の気持ちのよさはなんともいえない。お陰で風邪も引いたことが無い。
  銭湯でも、アカスリに結構、力をいれている。しかし30分で3000円、1時間で7500円もする。オッチャンは自分でやるから、タダだ。でも、ちょっと疲れるな。しかし、これからもセッセとアカ落しにかようことにしよう。それが自分にとって適度な疲れを得ることができ、血流もよくするし、何といっても清清しい清潔感を存分に味わえる楽しみをもたらすからである。
(C.W)