新たな出会い・研鑚・社会貢献の場を求めて
**** 顧客の信頼と満足度(1) **** |
奥さんが孫の家に出かけてしまい、暫く留守をあずかることになったオッチャンがいる。こんなときは、日頃たべていない自分だけの好物を求めて買い物にいくことが多い。だが冷蔵庫の中には、前日までの余り物や奥さんが気をきかせて取り急ぎ買ってきた食糧がたっぷり入っている。これでは冷蔵庫のものを片付けねばならない。それでは何の面白みもない。彼はあるときから、出かけるときは計画的に冷蔵庫を空にしておくよう奥さんに要求した。
それから以後、オッチャンは自分好みの食材を求めることができるようになった。オッチャンの好みの一つに、生タマゴと納豆をかき混ぜて暖かいご飯の上にかけて食べる料理方法がある。しかし家では誰も卵を生では食べない。サルモネラ菌がどうのこうのと言うことで、生食の習慣がないのである。
オッチャンが学生時代に入っていた寮では、昼食などに定期的に納豆がでてきた。テーブルには、大きめの皿と納豆と卵が置いてある。この皿に自分でご飯を盛り、納豆を乗せ、さらに生タマゴを割って醤油をかけ、よく混ぜて食べる。
これが何ともいえぬほど美味しかった。いま、その納豆と卵は物価の最優等生である。長年にわたって、これほど価格の変わらない食品も珍しい。「水戸納豆」がよく知られた銘柄であるが、水戸の知人によれば最近の納豆は美味しくない、と言われる。
オッチャンも納豆は好きだけど、最近、納豆独特のうまさがないように感じている。スーパーなどの目玉商品にされている。貧乏学生の時に食べた納豆のほうがよっぽど美味かった。が、好きなことは変わらない。そんなことで、オッチャンは生タマゴが「絶対安全」という店でひそかに買ってくる。しっかり賞味期限も確認してくる用心深さは持ち合わせているようだ。
ある日、家族が誰もいないときに納豆を器にとり自分専用の生タマゴを割って、そのまま納豆の上にふりかけた。そしたらタマゴは鮮やかな血となって納豆の上に乗ってしまったのである。賞味期限は、まだたっぷりある。「生食絶対安全」が販売促進の最重要の商品である。
吐血したような鮮血にビックリ仰天したオッチャンは、とるものもとりあえず目ざすお店に直行した。念のために一つ余っていた卵も持参し、売り場担当者に詰問した。その店での対応は素早かった。係りの女性が、まことに申し訳ないと謝罪した。ところが予備に持参した卵は、その店で販売しているものとは違っていたのである。
娘がオッチャンの秘蔵の卵を食べてしまい、違う店の卵が残っていたのである。オッチャンは平謝りにあやまって、卵の上部に添付されているシールを頼りに、さらに2軒の店を訪ねた。結果は家からもっとも近いところであった。
そのお店で、「これこれ、しかじか..」.と説明した。売り場担当の女性とともに対応した責任者の男性は、冷静に事態を分析し、オッチャンの持参した卵を預かり直ぐに調べると即答した。あとで妻に聞いたら安売りで買った商品だったそうだが、正規の金額を払い戻してくれた。
その日のうちに、卵生産者との連絡をとり電話での回答があった。詳しくは聞いていないが、卵を選別するのに2系統のラインがあり、一つは目視での選別とのことであった。これが今回の原因だったらしい。卵一つとりあげてみても、ある店では常温で1か月は問題ない、という。また別の店では、冷蔵庫で20日なら心配ない、と言われる。
卵は、おおむね賞味期限を10日程度で設定し販売されている。しかし、その賞味期限の実態はどうなのか。オッチャンは勉強不足で調べているわけではない。たかが卵一つの事であるが、消費者に対しての応対の仕方で顧客の対応も大いに変わるものである。顧客第一主義とはよく言われるが、本当の顧客サービスとは何なのか、考えさせられるものである。(C.W)