ライター 千遥
我が国は世界有数の長寿の国として知られている。
これから述べようとする事柄に関して、難しいことを書くつもりは毛頭ない。高齢者に関する身近な問題は数多い。それらを解決するための基本的知識として、まずは基礎的な数字や問題点は大雑把でも、頭に入れておいたほうが良いだろうと思う。
そんなことで、まずは現状を整理してみる。
2011年の日本人の平均寿命は女性85.90歳、男性は79.44歳であることが去る7月26日に厚生労働省から発表された。女性は前年より0.40歳縮み、26年連続していた世界一から転落、香港に次いで2位に後退した。男性も前年比0.11歳縮んで前年の4位から8位に下がった。これらの要因の一つとして、多数の死者をだした東日本大震災が、大きな影響をもたらしたものと予測される。
平均寿命は死亡率などを基に、その年に生まれた0歳の子どもが何年生きられるかを示すものだ。これは男女ともに09年が過去最高であった。 11年は猛暑で死者の増えた前年に続いて、2年連続で縮んだ。50か国・地域の中で1位は男女ともに香港。香港は女性が前年比0.8歳、男性は同0.4歳延びた。
厚生労働省は「計算方式が異なるので、厳密な比較はできない」としている。これは全く同感するところである。
高齢者にとって、平均寿命は大きな意味を持たないだろう。最も関心のあるところは、平均余命であるとみて間違いあるまい。そこで、現在の年齢を基準として、その方があと何年生きられるか。主な年齢の平均余命の一覧表を示してみよう。表は平成20年現在のものである。
主な年齢の平均余命
年 齢
|
男 |
女 |
0歳 |
79.29歳 |
86.09歳 |
5歳 |
74.57 |
81.33 |
10歳 |
69.61 |
76.36 |
15歳 |
64.65 |
71.39 |
20歳 |
59.75 |
66.45 |
25歳 |
54.92 |
61.54 |
30歳 |
50.09 |
56.64 |
35歳 |
45.27 |
51.75 |
40歳 |
40.49 |
46.89 |
45歳 |
35.79 |
42.18 |
50歳 |
31.21 |
37.34 |
55歳 |
26.79 |
32.69 |
60歳 |
22.58 |
28.12 |
65歳 |
18.60 |
23.64 |
70歳 |
14.84 |
19.29 |
75歳 |
11.40 |
15.18 |
80歳 |
8.49 |
11.13 |
85歳 |
6.13 |
8.21 |
90歳 |
4.36 |
5.71 |
95歳 |
3.15 |
3.97 |
100歳 |
2.31 |
2.27 |
平成20年度の平均寿命は男性で79.29歳、女性で86.09歳であった。すなわち誕生した当初から男は女よりも7歳近く短命とされている。これは男女差別ではないのか(^o^)。神様はなぜ男女平等にはしてくれなかったのだろう???
長寿化・高齢化の進む中で、最大の問題は健康寿命であろう。いくら生命が延びても不健康で、家族や介護施設、ヘルパーさんの助けを借りて、ただ生命だけが維持されているのでは何の意味もない。
この健康寿命は男性で71.4歳であり、女性では75.8歳である。平均寿命から健康寿命を差し引くと、男性の不健康期間は7.89年であり、女性は10.29年となる。
(不健康割合は男性で9.9%、女性で11.6%)
筆者の母は98歳まで生きた。しかし最後の3年間ほどはベッドに横たわったままであり、実妹の献身的な介護はあったものの、病院のベッドで半ば意識もないままに過ごした。延命治療は止めてもらい、自然なままに死を迎えた。
男性が短命な理由としては、癌になる割合が二人に1人に対して、女性は三人に1人である。また脳梗塞などの脳卒中も、男性側に圧倒的に多いことがあるかも知れない。女性の長生きは一見、結構なようだが、骨粗鬆症などによる骨折などにより、寝たきりとなるケースが多いようだ。各地の老人施設を見ても、入居者は圧倒的に女性が多い。そして認知症とみられる方の多さが目立つ。
これら施設の入居者だけ見ても、健康な寿命を全うしつつあるとは、とても思えない。痴ほう症で自分が何者か分からなくても生き続けることは出来る。平均的な余命は75歳の男性で11.4年。女性では15年もある。いまや80〜90歳は当たり前の時代になった。
延びた寿命、余命を如何に健康な余命とするかが最大の課題と言えるだろう。
老人、特に女性の生命力は強い。ベッド生活20年も珍しくない状態にある。しかし、こんな生活は本人は勿論望まないだろうし、家族も社会も望まない。如何に健康で明るい生活を迎えるべきか。団地や自治会単位でも真剣に考えている。
次回からは、その具体的な実例に触れていこうと思う。 (C.W)
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