放射能汚染! どうしたら?

「東日本大震災による福島原発事故の放射能汚染」を専門家が語る


 市内のNPO法人10団体が加盟構成する、鎌ケ谷市NPO連絡協議会が「福島原発事故後発生した放射能汚染」について専門家による講演会を主催した。

 台風12号が日本本土に接近する中で、一時開催が危ぶまれたが幸い本土接近が遅れて、天気も豪雨とならず150席用意した席も多くの市民が来場されほぼ満席状態となるほど、この放射能汚染に関する市民の関心度の高さが伺えた。

福島原発の放射能漏れ事故に対する専門家の講演を聴きに来られた多くの市民の方たち

 最初に、主催者を代表して五十嵐 實理事長より開会の挨拶が行われた。
司会の進行により、本日のメインテーマである「放射能問題を正しく理解し元気に生きる!」について、原子力発電所建設に関わった元製造メーカー技術者の小倉 志郎氏が講演された。最初にご自身で作成された創作紙芝居「ちいさなせかいのおはなし」を使って、放射能問題を市民の方にもわかり易く説明された。

小倉氏の創作紙芝居 核燃料棒の説明 講師の小倉 志郎氏

 小倉氏は退職されるまで原子力発電所の設計・建設・試運転・定期検査など原子力関係の仕事に関わる中で、重大な疑問を感じていたと話された。新潟県の柏崎原子力発電所を例にその発電施設の説明や、原子炉の構造など基本的な説明をされた後、今回の福島原発で地震と津波による冷却ポンプの電源消失と冷却ポンプが破損・機能しなくなったことによりその後、使用済み核燃料棒の温度上昇により水素爆発を引き起こし、また原子炉内の核燃料棒も同様に溶け出して、メルトダウンを引き起こしていると東京電力が発表しているが、これにも元技術者として疑問を感じるといわれた。

 東京電力や政府の発表では、原子炉の冷却用ポンプに電力が供給されず、それが原因で水素爆発による原子炉建屋の崩壊や、原子炉内の燃料棒のメルトダウンが起きたとされる、津波原因説を主因としているが、実際は津波が起こる前に、今まで絶対安全と言われていた原子力発電所の耐震設計が、設計上の想定を超える巨大な地震であり、津波が来る前に原子力発電所の重要部分が破壊され機能しなくなっていたのではないかと疑問視されている。(地震発生時には原子炉の緊急停止システムが稼動して、一旦は安全に全原子炉が停止をしたものの、その後、これまた想定を越える巨大津波によって原子炉建屋の電力が絶たれて、原子炉の制御が全く利かなくなって、使用済み核燃料棒の冷却機能が失われて熱暴走して、周辺の水と燃料棒が反応して大量の水素ガスが発生し、それが引火爆発して原子炉建屋が吹き飛び、その際に大量の放射能を大気中と高濃度の放射能汚染水が海中に流れ出した。)原子炉内のメルトダウンを起した核燃料棒も、実際にカメラなどでそのメルトダン状況を確認したわけではなく、東電側での計算上の推測からメルトダウンを引き起こしているのではないかと電力会社の隠蔽体質を批判されている。  (注:( )内は筆者が報道内容を元に追加補足した部分)

 小倉氏が言われる話しの中で、正常に稼動している原子力発電所からも常に僅かではあるが放射能は外部に排出されているといわれた。また、原子炉建屋の中に使用済みの核燃料棒を一時保管用場所として冷温プールに保管しているが、これも保管場所としては構造的にも弱く、巨大地震に対する耐震力が小さいといわれた。
 そして決定的な事実は、現在の技術力を持ってしても使用済み核燃料棒を元の状態(無害化)に戻す事はできないということだ。従って、小倉氏は原子力発電所の建設には反対で、既に老朽化した原発は廃炉として、新に原子力発電所を日本国内に新設する事は避けるべきであり、代替用の自然エネルギーによる発電などに今後力を入れていくべきであると結ばれた。

 講演の後、参加された市民の方から多くの質問が寄せられたが、元原子力発電所建設の技術者として自分の分かる範囲については丁寧に説明され、放射能の人体に及ぼす医学的な質問等については、専門外のため分からないと元技術者らしく誠実に答えられた。

 この後、地元のNPO法人 童謡文化を広める会 の瀬川理事長の指揮で会員が、童謡を「夏は来ぬ」「きらり鎌ケ谷」など4曲のコーラスを披露した。

童謡文化を広める会 指揮をする瀬川理事長 懐かしい童謡を歌う

 ついで、医学博士の田中聖英氏による「放射能と健康について」を講演された。地元在住の田中氏は現在78歳となるが放射線の元専門家として、今回の福島原発事後に伴う放射能汚染について、最初に基礎的な放射能と放射線の違いなどをわかり易く説明された。また日常生活上で注意しなければならない放射能被曝について話をされた。

放射能被曝の説明 講師の田中 聖英氏 時にはユーモアを加えて説明

 特に放射能被曝(内部・外部)については妊娠の可能性のあるご婦人、授乳婦、それに乳児、幼児、小児(13~14歳くらい)は極力放射能被曝、放射能体内被曝を避けて欲しいと述べられた。巷では放射能汚染に関する多くのマスコミ情報であふれているが、自分なりに情報を精査して正しいと思われる判断をして欲しいと、時折りユーモアを交えながら話しを結ばれた。講演会の後の質疑でも、小さなお子さんを育てるお母さん方が放射能被曝に敏感で、自分の子どもを被曝から守るためどの様にすればよいのかなど質問が続いた。

 また、地元のNPO団体から震災時の(障害者の方たち)施設利用者の様子などを報告した。発表団体はNPO法人の「鎌ケ谷工房」「きらら」責任者より震災時の体験談を話された。日頃の訓練が今回の避難に役立ったことと、子ども達の落ち着いた行動に助けられたと報告された。
 「感声アイモ」の理事長からは、「心と身体が元気になる発声体操」を参加者と体験。理事長の指導で参加者全員でゆっくりと大きな声で一語一語「奥の細道」を朗読した。

鎌ケ谷工房の高橋所長 きらら 松村理事長 感声 木村理事長

 今回のイベントの最後は、地元のよさこいソーランを踊る団体、「孔雀連」による演舞が二つ披露された。”よさこいソーラン”の楽曲に併せてメンバー全員が元気に舞台を飛び跳ねる!参加者もこの演舞を見て元気をもらったようだ。

孔雀連の皆さん 今年の新作を披露 よさこいソーラン踊りを楽しむ観客

 NPO法人 鎌ケ谷市NPO連絡協議会の高橋副会長が閉会の挨拶をされて、3時間に及ぶイベントを終了した。

(レポート:M太郎)