IT関連商品の寿命について思うこと



 デジカメ講座最近、市の委託を受けて”団階の世代”のための、デジカメとワードソフトを組み合わせた2日間6時間のパソコン講習を行った。
参加された市内の受講者は男性も女性も、ワードの文字入力程度は出来るレベルの方を対象とした。しかし、実際にテキストに基づいて講習を実施してみると、意外や結構他でもパソコン講座を学んでおられて、習得レベルの高い方も数名参加をしておられた。無論ワードの文字入力レベルの域を出ない方たちが大部分である。

 講座開講に当たり、受講生がこの講座実施中に、公共施設のPCで作成した各自の作品をインクジェットプリンターで打ち出すために、会場となるPC研修室に自宅からプリンターを持ち込んで、参加された受講者が各自作品を紙に打ち出し出来るように設定を行った。最初の内は問題が無かったが途中から、プリンターに何度データーを送ってもガリガリと音がするだけで、一向に出力された記録紙が出てこないので、PC研修室にあるモノクロのプリンターに切り替えて急場をしのぐ事とした。

 その後、自宅に持ち帰ってインクジェットプリンターの内部を見てみると、何かインクカートリッジを左右に動かすゴムベルトの上辺りについていた、ガイドシート(細長い樹脂製のシート)が外れているのが見えた。この程度であれば、わざわざ修理に出さなくてもカバーを外して、再度ガイドシートを取り付け直せば上手く動くのではないかと、素人考えでプリンターの外カバーを外すことに取り組んでみた。

インクジェットプリンター BJ535PDの筐体
キャノン製でPIXUS BJ535PDの筐体

 ところが、あにはからんや・・・最近のインクジェットプリンターは、昔のようなビスやネジ類が全く外側から見えないのだ。
今回トラブルに見舞われたインクジェットプリンターはキャノン製でPIXUS BJ535PDである。購入した時期は2002年11月と領収書に記載があるので、5年と5ヶ月使用した事となる。その当時は購入価格は25,000円で購入をしている。そこで、一応商品を取り扱っている量販店で、店員の方にプリンターを修理することが出来るかどうか訊ねたところ、修理は出来るとの事。C社のプリンターだといくらぐらい掛かるのか訊ねると、最低でも7,000円~との事。最近のプリンターは性能も良く且つ価格も安いとあっては、簡単に修理に出す事をためらってしまう。C社のプリンターも一番安い機種は8,000円ぐらいから購入できるレベルであり、下手をすれば修理代を払って使えるようにするよりも、新品を購入(無論機能では少しレベルが落ちるが)出来るのである。店員の方から最新機種のカタログなどをもらって再検討する事とした。

プリンターのカバーを外した写真
プリンターのカバー類を外した写真

 そこで、だめ元でインクジェットプリンターの修理に挑戦してみる事とした。PCに強い息子の助けを借りて、まず最初にプリンターの外カバーを外すことに取り組んだが、悪戦苦闘するもサッパリ、カバーを外す手がかりが掴めない。カバーの凹部に▽のマークがあるので、ここを何とかすれば外れるのでは試してみたがなかなか外れない。結局あきらめて全て息子に分解を頼んだのだが、結局はカバーの凹部に▽のマークの箇所に、マイナスドライバーを差し込んで、グイと梃子を利かせて持ち上げると、やっとカバーが少し持ち上がった、更にカバーの内部に手を差し込んで、筐体に引っ掛けてある突起を外すとやっとカバーが上下に分かれたのである。

プリンターの給紙装置 インクカートリッジ駆動部(上部) インクカートリッジ駆動部(前部)
プリンターの給紙装置 インクカートリッジ駆動部(上部) インクカートリッジ駆動部(前部)
インクカートリッジ駆動部(背面) モーター左のギアーが空回り カートリッジ制御機構部(上面)
インクカートリッジ駆動部(背面) モーター左のギアーが空回り カートリッジ制御機構部(上面)


 さて、そこからが更に作業が難しくなる。プリンター機構部のシャーシーと樹脂製の筐体が外れないのである。色々と筐体内部の細いコード類を作業がしやすいように外してから、底辺部に見えるネジ止めの箇所(4~5箇所)のビスを緩めて、やっと下部筐体と機構部を分離する事ができた。
最初の部分に記載した、、ガイドシート(細長い樹脂製のシート)は簡単に取り付けることが出来たのであるが、電源を入れてみてもやはりガリガリと音がするだけで、一向にインクカートリッジがスタート位置に戻らないのである。何が原因かと思って機構部の周りを観察してみると、どうやらインクカートリッジを制御する機構部のカムシャフトがつながっているギヤーが空回りしている事が分かった。ギヤーやカムに関係する部品が壊れているかとも思いいろいろ点検したけれども、結局何が原因かわからないまま、機構ユニットをいじくっている間に、ギヤーのシャフトを固定している樹脂性の部品を折ってしまった。これではまずメーカーに修理を出してもユニット交換となって、1万円やそこらでは到底修理できそうにも無いと思えたので、修理に出すのはあきらめた。

 参考までに、C社のプリンターがバラバラに分解された写真を添付しておきたい。もう少し知識があればもしかしたら修理が出来たかもしれないが、結局は他の部品は何の不具合も無いのに、廃棄せざるを得ない状況である。資源の無駄使いと感じても、修理費用が新品購入価格の半分以上にもなるのであれば、当然消費者は新しい商品を購入した方が得である。

 本来なら、メーカー製品の原価(材料費+人件費+管理費)を考えるととても1万円以下で出来そうも無い商品を、現実には1万円以下で販売しているわけである。どこで採算を取っているかといえば結局消耗品(インクや写真用の記録しなど)の販売によって、高い利益率を確保してバランスを取っているのではないかと思う。

 でも、いつからIT関連の商品は修理もしないで、使い捨てが当たり前の世界になってしまったのだろうか? 戦前生まれの世代にとっては”もったいない”という気持ちが強く、少し罪悪感を覚える。IT商品は競争が激しく次々と新しい商品が開発・販売され、数年立つと故障もなく機能は問題ないのに、ドンドン商品が陳腐化してしまう。まだ十分に使えるにも係らず(我が家でなMD式の音楽再生機があるが、もう使っていない?)処分されるか、使われずに眠っている。IT商品で言えば、その典型的な事例が携帯電話ではなかろうか。

 今、新興国の経済成長が目覚しく貴重なレアーメタルや鉄・銅など、更に古紙、ペットボトルをはじめ、日本国内で廃棄処分される多くの資源ゴミが活用されないで、高く買ってくれる外国に引き取られ再利用されている。資源小国の日本がこのままの状態でほっておいて良いものか心配である。今世界中で資源が高騰し、資源の奪い合いが起きているというのに、産業界や自治体、政府レベルで廃棄される資源の再利用をもっと真剣に検討する時期ではないのかと思う。

 ちなみに、今回プリンターを結局修理も出来ずに本体をバラバラに分解して、筐体の樹脂部分と機構部のシャーシー及び電子部品が搭載された基盤部分に分けて、市のゴミ処分場に持っていったところ、ゴミのサイズが縦・横・奥行きの合計で1m以内であれば廃棄処分料金は無料との事であった。せめてこの廃棄処分されたパーツが再利用資源として有効活用されることを望みたい。
投稿:M太郎