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                                         北京編  Part 4    ライター  千遥

 前回に書くべきもので忘れていたことがある。北京到着の翌日、朝一番に北京駅に行った理由の第一は、3日後、すなわち7月10日に行く予定になっている張家口までの切符と、12日のチンタオへの新幹線の切符を購入するのが大きな目的であった。中国旅行では、列車の切符手配が結構ややこしい仕事の一つなのである。慣れた方は、15パーセントほどの手数料を支払って旅行代理店に頼むことが多い。

 近年、社会の民主化が進んでいる、とは言われるものの、実際はやはり顔のきく人が優先されているし、まだまだ闇のワイロが幅をきかせているようである。そして最大の問題は、人々のマナーがまるでなっていないところであろうか。
 北京駅に着き、目的地までの切符を購入しょうと思ったら、乗車券の販売窓口には物凄くたくさんの人が押し寄せ、群がっている。日本人のようにきちんと並んで購入する習慣などはない。大勢の人たちが右から左から、われ先にと売り場に殺到する。お金を投げ入れてしまえば、自分の勝ちという感じだ。窓口の担当女性もせわしいこと、この上もない。皆が怒ったような大きな言葉で先を争う有様は、中国独特の光景でもある。
 中国が国際社会の中で一流の国家として認めてもらい、かつ近代国家として発展を遂げていく上では、このような日常の行動一つの改善にしても、避けてとおれるものではないだろう。

 そのようなことで、片言の中国語を使いモタモタと切符の購入などを行うのはかなり難しい。至難なわざである。優しく礼儀正しい日本人なんかは弾き飛ばされてしまう、というものだ。とにかく態度の大きい人や声のでかい人間には適わない社会である。

 こりゃあ、アカン !と思ったら、何と隣りに老人専用の切符売り場があった。さすが老人を敬う中国ならではの仕組みだ。わが日本国には、このようなことは無さそうである。お蔭様で当方も、何とか目的地への切符を購入することができたわけである。この日、求めた切符でも、張家口は北京西駅からの出発であり、チンタオは北京駅からの出発である。
 北京にはこのほか北京東駅と北京北駅があるが、中国各地への出発駅は99パーセントこの二つの駅に集中している。両駅の間は結構離れているから、切符をよく確認しておかないと大変なことになる。まずは二つの乗車券が確保できて、この日のメイン仕事は終わった。

 下図の左端と右端は、Google Earthで絞り込んだ北京駅近くの後日宿泊予定のホテルとM氏宅の団地である。遠洋天地 =(日本文字)= オーシャンパラダイスとは如何にも豪快な団地名だ。そんなことで、Googleでも検索できてしまうのかな。



         a                                      b
京都ホテルの位置 北京駅の位置  近くのDVD店 建外SOHOの位置 北京のマンション
  
     Google Earthで検索した(a)と(b)と北京駅地図との光景 
                      ~上記の画像は、いずれも拡大表示されます~

            

                 こちらは現地で撮影した京都苑賓館と遠洋天地の建物


 王府井(ワンフーチン)のイトーヨーカドーについては、少し説明が足りなかったようである。現地中国のスーパーとの違いは、一見してすぐに分かる。まず、中国のスーパーマーケットなのに、日本のイトーヨーカドーがそっくりそのまま、中国に作られているという印象である。店内に書かれた文字が違うことと、買い物をするお客の顔つきが少しだけ違うこと位である。
 それも意識しなければ何も日本と変わらない。なにごとにも大雑把な現地スーパーと比べれば、こまやかな配慮がそこかしこに見受けられる。生鮮食品も日本と同じようにプラスチックのトレイに綺麗に包まれて陳列れていることや、レジの袋なども日本と同じように綺麗なものが用意されている。店員の応接ひとつにも、日本人店員並みの丁寧な態度と対応の良さがある。

 つぎに、一般的に現地のスーパーよりも価格が高いとの評判にも拘わらず、朝早くから多くのお客が詰めかけていることが目立つ。これは現地の人口そのものが巨大であることに加え、都市社会における富裕層の増加が多少の価格差よりも、サービスの良さと共に、より良い商品を求めている証なのかも知れない。
 日本食品に関しては、日本本土の価格よりはやはりちょっと割高な感じがする。納豆でも日本の100円が160円程度はする。500ml程度の焼酎は1200円程度。いずれも現地で生産しているわけはないだろうから、まあ、これは仕方のないところか。その他おにぎりや寿司、味噌などもあり、まず日本の味に飢えることはないだろう。インスタントの味噌汁などもある。

 そうはいうものの、販売方法では勿論中国独特の方式が無くなることはない。魚や蟹、イカや肉などは昔からの伝統的な秤り売りが主体で、大きな肉の塊などが店内に吊り下げられている。梱包単位にとらわれることなく、好きなものを好きなだけ購入できる仕組みは変わらない。

 日本との大きな違いは、お客がバッグや手提げ袋などを持参して入店できないことだ。その手持ちのバッグに商品を入れて持ち去られることの防止である。これは上海のスーパーも同じであった。大事なことは、怪しまれそうな袋は何も持たずに入ることである。

 王府井の散策から戻ったあとは、シャワーで汗を流し夕方5時までは昼寝である。疲れもとり、休息したあとに夜の街に繰り出すことになる。その前に団地内にあるMさんの行きつけのクリーニング店に寄り、DVDの販売店を覗いてみる。ここで、日本映画のコピー商品が売られていることを教えてもらう。それらは売り場の一角に、かなりの面積を占めて陳列されている。後日購入することとして、見るだけは見ておく。

 新しい作品はあまりなかったが、古い人間でもあるわたしには、見慣れた題名の映画ばかりである。「七人の侍」「サンダカン八番娼館」「武士の一分」「世界の中心で愛を叫ぶ」などの商品がたくさん並んで置かれている。こんなところで誰が買うのか疑問が残る。セリフは日本語で字幕は中国語というものが殆どである。DVD1枚は8元(約120円)であった。
 これらは帰国前日にまとめて買ったが、我が家で再生して始めて中国製偽物商品の問題点も判明したということになる。

          

  
建外SOHOの外観 SOHO内部の商店街(1) SOHO内部の商店街(2) 上空から眺めた建外SOHOの位置


スナック「惠雪」のある建外SOHO Google Earthの検索から抜粋したもの   ~すべて拡大表示~

 Mさんの経営するスナック「惠雪」は天安門にも近い街の中心地・国貿橋にある。この大型複合施設「建外SOHO」は2004年4月に日本の建築家・山本理顕氏の設計により完成したものだ。延べ面積70万平方メートルにも達する。ここに3000戸の住宅を含め、ショッピング、レクレーションなどの施設や様々な会社が入っている。北京の商務中心地とも呼ばれている存在である。

 SOHOとは、「Small Office Home Office」の略語で主婦の在宅ビジネスの代名詞だったようだが、今、日本では「Sweet Office Happy Office」とも呼ばれているらしい。 いずれにしても、我々部外者には何があるか分からない奇奇怪怪たる建物群である。

 一直線に行くわけにもいかないから、腹ごしらえをせねばならない。何事も練習であり、まずは地下鉄に乗る。北京の地下鉄路線はそれほど多くない。主力の1号線と2号線に加え、よく分からない10号線などがある。Mさんは毎日通勤ゆえにプリペイドカード使用だが、当方は毎度窓口で切符を買わねばならない。駅に自動販売機は見当たらなかった。それではと窓口で買うことになる。
 路線が少ないから、3通りの言葉だけで通じる。切符の値段は3元、4元、5元のいずれかになる。日本円では、45円から75円である。3元の切符を1枚だけ買うのならば、 (サンクワイ・イーチャン)と言えばよい。 これは「3元の切符を1枚下さい」ということであり、至極簡単である。これだけの言葉では、相手もまさか日本人とは思わない筈だし、そんなことは気にしておれないだろう。

 夕食は、東来順酒店(料理店)という店で羊のシャブシャブ料理である。北海道でよく食べるジンギスカン料理とは少しだけ違う。ジンギスカンは羊肉を鉄板の上で焼いたものにタレをつけて食べるが、シャブシャブ料理だから肉を熱湯につけ柔らかくしてからタレをつけて食べる。野菜も白菜やネギ、海草などと一緒にいただく。ビールは何処でも中びんが多い。ここでは燕京(ヤンチン)ビールであった。これは北京生産のビールという意味である。
           

      カラオケ画面  

                         ~テレビモニターのみは拡大表示されます~

  目的のスナックは、この巨大な建物群の中にある3号棟だ。13階で降りると小さな入り口がある。早くいくと、目印は何も無い。7時過ぎ位になると、店の名前が玄関に張り出してある。もちろん建物の外には看板などはないから、一見のお客はまず来ない。私はタダの宿泊代に見合うお金は、この店に全て注いできたというわけである。

 飲み物は、ビールのほかにウィスキーのシーバスリーガー、それに、焼酎の「いいちこ」があり、ほかに日本酒などがあった。飲み放題、カラオケ歌い放題で200元ほどであるが、焼酎のボトルを入れると300元ということで、その後は毎日焼酎をのんでいた。北京には、おおよそ50軒の日本人客専門のスナックがあるとの話である。夜の商売の競争も激しいものがある。部屋はかなり大きく、さらに4つにわかれているから、4組のお客は充分に自分たちの歌を楽しめる。

 ただし、お客が我々だけだと4人の女性は皆こちらにいるから、それだけ割高にはなったに違いない。店の彼女たちの日本語は、達者なものがあった。しばらくあとになって、その蔭には日夜たゆまざる勉強があったことも知る。
 この日は、二人とも調子にのってしまいスナック2軒のハシゴとなった。いい機嫌で帰宅したときは、すでに午前1時をまわっていた...。(つづく)
                    
(C・W)