講演「放射能汚染! どうしたら?」


 H26年9月30日(火)鎌ケ谷市総合福祉保健センター6階大会議で、講演会「放射能汚染! どうしたら?」が元原子力発電所技術者 小倉 志郎氏をお招きして、鎌ケ谷市NPO連絡協議会が主催した。

司会の菅原氏 開催挨拶をする松村理事長 来賓の椎木国会議員

 開催に先立ち、同NPO法人の理事長である松村 幸江氏による開催の挨拶に続き、来賓として参加された国会議員の椎木 保氏が来賓のあいさつをされ、その中で自分も国会議員になる前は学校の教員を長く務め、福島原発による放射能被害が子どもたちに及ぼす影響を大変危惧している。維新の党 原子力政策については党としても個人としても原子力発電の再稼働には反対であると述べられた。

 今回は鎌ケ谷市内で2回目となる講演会で、小倉氏は「自分と子供の命を守れ」と元原発技術者が語った。

 今回の後援は講師の小倉氏にとっては二度目の講演となる。冒頭に小倉氏よりこの講演を初めて聞かれる方はこの会場にどれくらいおられるかを挙手で示してもらうようお願いされたところ、およそ参加者の半数が初めて参加されることが分かった。

講演をされる小倉 志郎氏 講師のお話を熱心に聴講する市民の方々

 そこで、小倉氏は初めて参加された方のために、何故自分がこうした講演を始めるきっかけとなったかを説明された。
2011年3月に東日本大震災により福島原発の爆発事故が起きて、大量の放射能が福島県内に飛散し、それにより住み慣れた故郷から避難せざるを得なくなった多くの福島県民の方が、その後も元の故郷に戻れる見通しはつかず、いまだ多くの人々が避難所暮らしや他府県で避難生活をされている。

 こうした原発事故に直面する以前から、元原子力発電所技術者として退職後、原子力発電による放射能の危険性を考え、原発稼働による大量の核燃料廃棄物処理が未確定の状況から、原発技術者として反対の立場を示している。

 2010年8月に発生した福井県の実験炉「もんじゅ」の原子炉内での燃料交換用道具の釣り落とし事故の後、事故処理情報が公表されず、「もんじゅ」を所轄する文部科学省に説明を求めている間に、文部省が2011年度から小・中学校教育で「原子力発電所は安全でクリーンなエネルギーを作る良い発電所であり。資源の少ない日本には必要なものだ」と教えるように通達を出したことを聞き、小倉氏は、まだ批判力の小さな子どもたちにこのような教育を進めることを阻止するため文部科学省の担当部門に通達の撤回を求めて陳情をしたという。
 一応担当部門の官僚は話を聞いてはくれたが、その後問い合わせた結果、意見は承ったが学校への通達は既に決めたことゆえ1年間実施し、その結果を見て、どうするか判断するという、正に聞き置くという態度。

原発は放射能の危険がいっぱい 原発の怖さをこの紙芝居に集約 ボランティアで受付担当の方

 小倉氏が原子力発電の恐ろしさを子どもたちに伝えるにはどうすればよいかと思案中のところ、縁あってお手伝いをしていた鎌ケ谷市の市民活動の一環として紙芝居を蘭の會で作る事になり放射能の問題からも、そのことを紙芝居にして伝えたらどうかと提案があり、市内のNPO法人の方の協力で紙芝居を作り、福島原発事故後に各地から講演要請があればこのように紙芝居を演じさせていただいていると話された。

 そして、講演の本題となる原子力施設の説明(BWR概略フローシート:原子力発電所の全体のシステム図)をされた。この中で一番のポイントは、従来の火力発電所では石油や石炭を燃やして発電すると、大量の炭酸ガスを大気中に放出し、燃料の燃えかすは灰や固形物とし残るだけであり、廃棄処分や一部再利用することも可能である。火力発電所の中の燃料を燃やすボイラーを原子炉に変えたのが原子力発電所であり、その炉心で核燃料(ウラニュウム)が「燃える(ウラニュウムが分裂する)」と多くの放射性物質が新たに生じ、その放射性物質を沢山含んだ使用済み核燃料は発電所内の使用済み燃料貯蔵プールの中で、常に冷却しながら一定温度に下がるまで保管し続けなければならない。

 地球ができて45億年近くたつが、最初は危険な放射能で地球はおおわれていたがこの45億年の間に危険な放射能を発生させる、物質は安定化して人類にとって危険ではなくなった。しかし、科学の進歩で人類が原子力を利用することになって、放射性物質を含む元素が、核分裂反応により沢山つくられる危険な時代になってしまった。日本政府はチェルヌブイ原発事故に次ぐ福島原発を経験しても、インドやトルコ、ベトナムなどに原子力発電所を輸出しようとしている。

 中国などは自国で今後80基ほどの原子力発電所を建設するといわれる。一番問題なのは現在も原子力発電所で燃やした使用済み核燃料の保管場所がいまだ決まらないことだ。青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理施設も稼働見通しが立たない状態であり、ましてや使用済み核燃料が無害化するまでには数十万年とも百万年とも言われる気の遠くなる時間が必要であり、人類は何世代にもわたり、それを安全に保管しなければならない。日本政府はこの永久保管場所も決めないまま、国内の原発を再稼働し、また新たに外国に原子力設備を輸出しようとしている。

 こうした、原子力政策については政府や国会議員、企業は目先の利益のため、原子力施設の再稼働や外国への輸出を優先している。元原子力発電の技術者として、自分と子孫の命を守るため何をすればよいかと考え、現在こうした原発の危険性を訴える活動を続けていると話された。

 この後、小倉氏の講演に関して何か質問が無いかを司会者側より問いかけがあって、数人の参加者より質問があった。質問者の中には、福島原発で起きている放射能漏れを止める作業についての質問や、文部科学省による子供への原子力発電の安全性についての教育指導はどうなっているのかなど質問が続いた。

 筆者も取材を終えて感じたことは、この福島原発事故の経験から、自然災害による原発事故や運転中の事故などによる一般市民の放射能汚染を避ける避難経路計画が、原発設置の県内でいまだ明確に決まっていない事であり、長年使用した(40年程)原発を廃炉にするときの廃炉技術や廃炉に伴う膨大な撤去費の発生を考えると、決して原子力発電は他の電力発電方法と比べても決して安くないということである。

取材:S.K