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**** 戦後60年目の選挙 ****


 今年の夏は暑いなぁ、と思っていたら更に暑さを加速させる出来事が起きた。小泉首相の固執する「郵政民営化法案」が衆議院では僅か5票の差で可決されたものの、参議院では予想以上の大差で否決されてしまったのである。頭にきた首相は、前々からの予告どおり参議院の否決を理由に、何ら関係のない?衆議院の解散に踏み切ったのである。

  参議院の否決(不信任行為?)を衆議院にぶつけるという、まさに「やけっぱち」な行為をあえて実行した。まっとうな理由とはいえないが、法的に違法ともいえない。そして8月30日の公示、9月11日投票と、さっさと決めてしまったのである。年来の構想をしゃにむに押し通そうとするこのガンコ首相のお蔭で、涼しい秋の到来を楽しみにしていたオッチャンの望みははかない夢と消えた。この8月末からも、名前と党名だけを連呼する、やかましい選挙カーがぞくぞくとやってくる。

  以前、東京蛎殻町の下町に勤務していたとき、たまたま区会議員の選挙があった。この場合は該当地域が限られているから、徒歩や自転車で選挙運動をすることも出来る。面白いのは「磯野某」という候補者。いつもミニ貨物車に、自らの名前を大書きした赤い大きな幟とスピーカーだけをつけて、狭い小道をゆっくりと、くまなくまわる。選挙演説も連呼もしない。スピーカーから流すのは長谷川町子さんのマンガ・「サザエさん」のテーマ音楽だけだ。サザエさんから「磯野」を印象付け、悠々とトップ当選してしまった。今、こんな優雅な選挙運動をする人はいないだろう。因みに、この車を運転していたのが、本人かどうかは未確認である。

  オッチャンは、北国育ちではないのに暑さには極端に弱い。酷暑の時期は、とりわけ弱くて毎日が寝不足になる。裸同然で寝るが、いつになっても寝付けない。幸い24時間が自分の時間だから、その分を昼寝で取り返すことは出来る。が、もっさりとテレビを見ていると、国会議員の先生方も我にも増して昼寝が好きなようだ。同僚が懸命に討論を展開しているのに、かたや白川夜船でコックリ、コックリと気持ちよさそうである。難しい「郵政問題」になると、眠くなるのだろうか。郵政関係議員でないから、関心が薄いのであろうか。まさかそうではあるまい。

  同じ居眠りでも、こちらは老人で、しかも低い年金生活でのウタタネであるが、先方は国民を代表し、よりよい日本を構築する重大な責務を持ったバリバリの現役である。テレビ放映されているのにも拘わらずコックリさんだ。ふざけるな。自らの主要な仕事場での居眠りとはもってのほかだ。高給をもらい、種々の優遇手当てや処置を頂いているのだ。そのうえ、引退後にも議員年金という手作りの厚い収入源もちゃんと用意されている。とにかく一般庶民には考えられない待遇が用意されていることを忘れてはならないだろう。

  政治家と官僚は、実は表裏一体である。政治家がしくじると官僚・自らの出世や立場も危うくなる。一方、政治家も官僚の補佐なしには何もできない、という実態がある。それにしても南野知恵子法務大臣もひどかった。官僚の作成した答弁書を読むだけだ。おまけに読み間違えて、何回もやり直す。男女共同参画という命題のうえからも、女性閣僚の数あわせで閣僚になっただけといわれるから、やむを得ないのかな。ところで、この南野を何と読むかお分かりの方が何人おられるかしら..............。
これ、(noono=のおの)と読むのです。ノンノンではありませんネ。読めた方はまず素晴らしい「閣僚候補」として小泉さんか、岡田さんにでも推薦いたしましょうね。
  いずれにしても、お偉い方はオッチャンとは、身分も立場も全く異なる。それをしっかりとわきまえて、国民のために働いて貰わねばなるまい。noono先生は看護婦会推薦の参議院議員だから、選挙の洗礼もうけずに助かったというものか。

  これら気楽な先生方も、ガンコ一徹の首相に解散という伝家の宝刀を抜かれてしまい、居眠りどころではなくなった。慌てたのは郵政法案に反対した与党の議員たち。解散されたら、もう議員でも先生でもない。自民党執行部は、反対派の前議員は公認しないとか、強力な対立候補を送り込むという厳しい戦術をとった。執行部の処分を甘く見ていた前議員たちは、結構大きな痛手を受けたにちがいない。公認候補でなければ、党からの選挙費用が出ないのに加え、無所属だと選挙法により、ポスターや宣伝カー、事務所の設置数などの制約も受ける。
  反対派の議員たちは、国民新党とか新党日本などというミニ政党を立ち上げた。まだ裁判の結果もでていない汚職議員も、「北海道限定」の新党大地などと称して旗揚げしたようである。前議員でも、当選しなければ、ただのおじさんやおばさんにすぎない。6人の党首は、討論会で手を結び健闘を誓いあったが、政治の世界は、「一寸先は闇」といわれる。
 
  反対派の選挙区に送りこまれた候補者を、マスメディアは一斉に「刺客」と称している。刺客とは元々、暗殺者の意味である。が、年代によっては、その意味すら知らない人もいるかも知れない。暗殺とはいかぬまでも、反乱軍を選挙で落とすために送りこまれる「刺客」との戦いは激烈を極めるであろう。勝つためにはタレントや著名人を担ぎだすのが自民党の常套手段であった。今回も、その例から外れるものではない。人を選ばないのは、いつの選挙でもおなじだが、霞ヶ関の高級官僚やエリート女性であることを武器に当選を狙うのはどんなものか。官僚からの転換による落下傘部隊に庶民の生活や地域住民の気持ちが分かるか。
  偉そうなことは誰でも言える。当選したら「実行する」と断言するが、一人では何も出来ぬこともまた、よく知ってもらいたいものだ。みな一様に「改革」というが、改革とは、「改め、なおすこと」なのである。この機会に、当選前の改革と、当選後の改革がどうなったか、よく検証してみるべきであろう。

  この間まで富士テレビ買収をたくらみ、プロ野球買収に動いたホリエモンこと、堀江貴文氏も送り込まれた刺客の一人として登場した。「金さえあれば、どんな女もものに出来る」などとほざいたホリエモンに、小泉さんの信念が伝わるのか。まことに怪しいものである。金でテレビ会社の乗っ取りやプロ野球チームを狙う者を、これこそまさに現代の刺客といえそうだ。オッチャンは、このような刺客を全く信頼しない。

  これらの候補者を判別するのは、我々一人ひとりの選挙民である。唯一これまでと異なるのは、過半数をとれねば首相を降板すると明言した小泉首相と、政権を取れなければ代表を辞任すると発言した民主党の岡田代表の存在である。。これ位の心構えがあって始めて、今回の選挙は白熱し真の戦いになる。選挙の結果により、政局は大きく動く。オッチャンもボーッとしておれなくなった。暑い夏も我慢して注目することとしよう。

  最後に、
  民営化によってNTTは合理化されたが拠点が極端に減り、不便になった。国鉄民営化によって、後を受け継いだ地元電鉄や第3セクターでの運営も、赤字の垂れ流しが多い。すでに線路が撤去された地域もある。民間会社は赤字を出したら潰れてしまうのだ。郵便局は減らさないという「小泉流改革」も、真に民間会社に移行すれば、採算に合わない拠点、すなわち郵便局は撤去されるのである。これがまさに資本主義の原則なのだ。「カイカク」という甘い言葉には「カイアク」という悪魔もひそんでいるかも知れない。

  あるホームページを見ていたら、中学生の素朴なことばがのっていた。ガンコ一徹で、口角泡を飛ばして絶叫するよりも、将来を担う子どもたちにも分かりやすく説明する余裕もまた、大切なことと思う。